第1巡:紹介:浅田 担当分

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発表:2003/04/24

基礎プロジェクト2(第1巡:「限界を超えて」)

 この本は、1972年に出版された「成長の限界」の続版とも言える書である。当時、 コンピュータモデル「ワールド3」によって得られた結果は、「現在のような傾向で、人口、 工業化などの成長が続けば、今後100年のうちに成長は限界に達し、その後は制御不可 能な突然の減退が起きる可能性が最も大きい」というような主旨のものであった。しかし、 このような発表があったものの、現在においても地球の維持能力は減退を続けている。そ して、「成長の限界」から20年後、再びワールド3の出した答えは、「資源の消費、汚染 物質排出の速度は、すでに物理的に持続可能な速度を超えてしまっている。しかし、早急 に手をうち、現状を大幅に改善することが可能であるなら、人口や工業の減退を食い止め ることも可能である」というものであった。今、限界を超えてしまっている地球を、いか にして救うか。いかにして人間は引き返せばよいのか。それが最も大きなテーマである。

 第一章では、まず、「オーバーシュート」について論じられる。これは、「意図せずにう っかりと限界を超えてしまうこと」である。その根底にある原因は三つ。一つ目は動きや 行為、変化の急激さ。二つ目は、それらがある種の限界や障害を持っていること。三つ目 は、抑制が困難であること、である。
 そして、このような行き過ぎの結果、二つの可能性が考えられる。まず一つ目は、ある 種の破壊が生じること。そしてもう一つは、意図的な方向転換、過ちの訂正、慎重な減速 が起きることである。これは、身近な例でいえば、暴飲暴食、なども含まれる。今回考え るモデルは、いうまでもなく、地球規模での行き過ぎである。つまり、人間およびその経 済活動が地球から資源を採集し、汚染や廃棄物を環境に排出する、という現象である。過 ちを訂正しなければ、何らかの崩壊が必ず起きてしまう。そうならないためにも、早期に 誤りを訂正し、方向転換をする必要がある。
 この考察に対し、4つの手法がある。そのうち三つは、科学的・経済的理論、統計資料、 コンピュータモデル、といった、ごく容易な手法である。そして、4つ目が最も重要なも のである。これは、「世界観」、あるいはバラダイム、基本的な物の見方、であり、システ ム論的な視野が必要とされる。これによって、経済と環境を一つのシステムとしてまとめ て考えよう、ということである。

 まずは、既に限界を迎えてしまっている「成長」について。現在では、世界の真の問題 に対し、成長以外の解決策が発見されるまでは、成長こそがよりよい未来の扉を開く、と 考えられているため、結果的にさらに成長をつづけてしまう。このような、心理的背景や、 国家間の制度の違いによる背景のほかに、人口と経済の結びつきにある「構造的な理由」 も、成長を続ける原因となっている。この構造的原因やその合意などが、第二章で述べら れる。続く三章では、限界の存在により、問題を解決しても、同時に新たな問題が発生し てしまうことや、地球の統計データを元にした、ソース、およびシンクについて考えられ ている。
 四章では、人類社会の行き過ぎに対して警告をするサイレン、および、社会の対応速度 に関して論じられる。基本的に、人類は未だ、最良の選択肢を選んでいるとは言えない。 スループットの限界を超えた地点から、人類社会を引き戻すという方策は、決して少ない ものではないのだから、手遅れになる前にこういった手段を選ぶべきである。五章では、 このように、先を見越し、限界を察知し、そこから引き返すという能力を示す事例として、 オゾン層問題を例にとって示している。
 六章では、ワールド3に対し、さまざまな仮説を組み込んでシミュレートを行う。ここ では特に、技術と市場に焦点を当てている。既存のインプットされている特徴を強化し、「も し、世界が汚染抑制」や土地の保全、人間の健康、原料のリサイクル、資源利用の効率化に、 もてる資源を本気になって割り当てた場合、どうなるか。」という問いかけをしている。
 その結果、技術と使用は有用であることはわかるが、それだけでは十分とはいえない。 そこで今度は、人間の利口さに知彗を加えたらどのようになるか、という検証が七章で述 べられている。また、それと平行して、持続性を定義し、持続可能な世界についての概説 も記されている。
 そして最終章は、我々の心的モデルから導き出されるものを用いて、持続可能な状態や そこに至る方法を想像しようという試みである。これまで、成長こそがすべて、と考えら れていたことに対し持続可能な解決策を見出そう、ということである。

 続いて、第二章に入る。この章では、成長を限界へと推し進める力についてが、大きな テーマとなっている。結論を言ってしまえば、この力とは「幾何級数的成長」、つまり、指 数関数的な増加関数のことである。これには二つの特徴がある。一つは、その増加が想像 を絶するものとなりやすいこと。例えば、「一日目には一円、二日目には二円、三日目には 四円・‥」と続け、30日目には幾らになっているか、などを計算してみるとよくわかる。 二つ目は、変化に対する認識が遅れやすいこと。これは、「シャーレの中で、微生物が一日 ごとに倍増していく。30日目にシャーレは埋め尽くされた。シャーレの半分を微生物が 埋め尽くすのは何日目か。」といった問題が例として考えられる。
 しかし、このような成長が、例えば人口増加に対し、起こり続けることは不可能である。 それは、幾何級数的成長を引き起こす原因そのものにある。その原因とは、それ自身自ら 再生して成長するか、自己再生する何かに成長を余儀なくさせられるか、のどちらかであ る。
 自己再生のループ(フイードバックループ)は、正のループと負のループ、二つのもの に分けられる。これは、良い悪いの意味ではなく、前者は因果関係を強化、後者は打ち消 す、または逆転させる、といった意味である。人口増加に限らず、生命体は皆、新たな生 物を生み出すという点で、自らが再生して成長するタイプであり、正のフイードバックを 持っている。そして、その影響をうけて、余儀なく成長させられているのが食糧生産や資 源、エネルギーの消費量である。
 人口増加率は低下しているが、人口基盤はその速度以上で拡大している。その結果、幾 何級数的増大を続けることになっている。また、この増加には、地域ごとに様々なパター ンがあり、それを分析した結果、「人口動態的遷移」という理論が打ち出された。
 低開発地域では、死亡率、出生率はともに高く、増加率は緩やかである。その後、栄養 や保健サービスの改善などにより、死亡率の低下がおきる。このため、出生率と死亡率の 間には格差が生じ、人口は増加する。先進国型までライフサイクルが進展すると、出生率 の低下により、再び増加率は緩やかになる。

 次に、人口増加によって成長が加速されている、工業成長について考える。「工業資本」 とは、工業製品を生む物理的な機械や工場のことであり、「工業生産」とは、その資本によ って作り出される、製品の絶え間ない流れのことである。そして、工業資本のストックが 増え、将来的な生産の拡大を可能にすることを「工業投資」という。ここで考えるべきは、 地球の維持システムによって制限される「物質の流れ」である。そしてこれも、人口の流 れと同様に遷移がある。
 人口が増えると、学校などの基礎的消費への結局、人口の増加によって工業資本の成長 は減速する。そのため、工業生産は投資に結びつかなくなる。また、貧困ゆえ、人々は子 どもの収入、労働力に頼ることになるため、さらに人口は増加する。こうして、貧しい者 を貧しさの中に閉じこめるという罠が発生している。
 また、飢えた人たちに食程を与えるために、地球に大きな代償を支払ってまで増産した はずなのに、その増産分は、より多くの飢えた人々を養うために、相殺されてしまってい るという、二重の悲劇も起こっている。
 現時点で、豊かな人、貧しい人両者のニーズを無条件に賛成、あるいは反対する立場で は、成長を論じる意味がない。今必要であるのは、限りある地球の急激な成長がいつまで 続き、どのようなコストを誰が払うのか、という点である。言い換えれば、今現在の真の ニーズは何か、そしてそのニーズを最も直接的、かつ効率的に満たす方法とは何であるの か、を問うということである。この問いに答えるために必要なことは、成長ではなく、「限 界」に焦点を当てることである。

第一章 オーバーシュート
・オーバーシュート
 →意図せずうっかりと限界を超えること
  ・原因1 動き、行為、変化の急激さ
  ・原因2 超えてはならない限界、障害の存在
  ・原因3 抑制の難しさ

地球規模での行き過ぎ
人間やその経済活動が地球から資源採集

汚染や廃棄物を環境に排出

地球規模の行き過ぎ
結果、ある種の破壊、あるいは、
意図的な方向転換、過ちの訂正、慎重な減速

未来予測のための手法(1)
・三つの一般的かつ容易な手法
 ・地球システムに関する標準的な科学的・経済的理論
 ・世界の資源や環境に関する統計資料
 ・情報を助けるコンピュータモデル

未来予測のための手法(2)
最も重要と考えられる手法
 →「世界観」あるいはパラダイム、基本的なものの見方
 システム論的な視野

成長の背景
・地球システムでの急激な変化
 →人口と経済の成長による
・経済成長は不可欠、という考え

成長こそがよりよい未来の扉を開く鍵であるという認識

本の構成(1)
・第2章
 ・成長の構造的な理由
 ・成長の世界システムに対する支配理由
 ・問題解決のために追求された成長が、効率的でない理由

本の構成(2)
・第3章
 ・限界の存在により、成長によって問題を解決すると同時に、新たな問題も生じてしまう点
 ・地球の統計データをもとにした、ソースとシンクの考察

本の構成(3)
・第4章
 ・ワールド3を用いての分析
 ・人類が現在選んだ成長の選択肢、およびそれを選んでしまった理由
・第5章
 先を見越し、限界を察知し、そこから引き返すという人間の能力の例

本の構成(4)
・第6章
 ・人間の利口さに関する、様々な仮説組み込み
 もし、世界が、
 ・汚染抑制
 ・土地の保全
 ・人間の健康
 ・原料のリサイクル
 ・資源利用の効率化
 に資源を本気で割り当てればどうなるか?

本の構成(5)
・第7章
 ・人間が利口さに「知彗」を加えたらどうなるか?
 ・「持続可能な世界」の概説
・第8章
 心的モデルから導かれた、
 ・持続可能な状態
 ・そこにいたる方法の想像
 という、個人的な試み。

第2章 幾何級数的成長
・行き過ぎの第一原因
 →急激な動き、成長、変化、幾何級数的成長
 ・想像を絶する速度の変化
 ・変化に対する認識の遅れ
 ・幾何級数的成長の原因
  ・それ自身が自ら再生して成長される
  ・自己再生する何かに、成長を余儀なくされる

フィードバックループ
・それ自体で閉じた因果関係の連鎖
 ・正のフィードバック
  因果関係を強化する
 ・負のフィードバック
  因果関係を打ち消したり逆転したりする

人口
・人口増加率は低下
 →しかし、人口基盤の拡大速度はそれ以上

人口は幾何級数的に増加し続ける

人口動態的遷移
 低開発地域
→死亡率と出生率が高く、人口増加は穏やか
→医療サービス改善による死亡率低下
→出生率、死亡率間に格差
→人口の急激な増加
→先進国化、出生率低下、人口増加率低下

工業成長
・工業資本
 工業製品を生む物理的な機械や工場
・工業生産
 製品の絶え間ない流れ
・工業投資
 工業資本のストックにより、将来的な生産の拡大を可能とすること

貧困と人口増加
・「富む者は富を得、貧しい者は子供を得る」
 人口増加
→学校、病院等への需要超過
→工業資本成長の減速
→貧困ゆえに、子どもの力を頼りに
→人口増加の悪循環

二重の悲劇
・人間の悲劇
 大幅に食糧を増産しても、飢えた人々の増加により、効果が相殺
・環境の悲劇
 食糧生産は、地球の大きな代償と引き替えに勝ち取った成果

成長と限界
無条件で成長に賛成、あるいは反対の立場を取っても無意味である。
・今現在の、真のニーズは何か?
・それを直接的、効率的に満たす方法は?
・持続可能な社会とは、どのようなものか?
成長ではなく、「限界」に焦点を当てる必要

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