第1巡:紹介:梅城 担当分

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発表:2003/04/24

基礎プロジェクト2
〜限界を超えて〜

2003年4月24日
A班 30777 梅城 崇師
担当:第3章、第4章

本書の全体構造と、第一章と第二章の詳細に関しては、既に淺田氏によって解説されているはずなので、ここでは簡単に示す。 第1章では、オーバーシュート(行き過ぎ)と題し、行き過ぎの仕組みやその結果についてまとめている。 第2章では、幾何級数的な成長や、フィードバックループといった、成長を限界へと推し進める力について述べられている。 第3章では、実際の具体的なデータをもとに、ソース、シンク、スループットの状況を綴っている。 第4章では、ワールド3を用いて、限界と遅れや、浸食ループなど、行き過ぎから破局に至るまでを説明している。 第5章では、オゾンホールの仕組みと、オゾン層破壊について科学者、政府、企業、消費者、そして国連といった世界が総力を挙げて取り組んだ様子を示している。 第6章では、ワールド3にモデル化した、技術と市場のフィードバック作用と、モデル実行結果を解説している。また、技術と市場だけでは行き過ぎを回避できない理由を示している。 第7章では、ワールド3へさまざまな社会システムの適用を試み、持続可能な社会への移行の可能性を探っている。 第8章では、農業革命、産業革命に続く、持続可能性を追求する革命について、そのための理念について示している。

3章内容
 第3章では、ワールド3は用いずに、実際のデータをもとに、ソース、シンク、スループットの状況を概観する。
●ソースとシンク
 人口と工業資本は、自己再生産する能力を持っている。この能力を実現するには、地球の「ソース」からエネルギーと原料の供給、地球の「シンク」への汚染と廃棄物の排出、そしてソースからシンクまでの絶え間ないフローである「スループット」の存在が必要である。人間が利用する資源は、ソース側からもシンク側からも限界があるが、その限界の性質は複雑である。例えば土壌は、食物生産のソースであり、酸性雨のシンクでもある。一方の役割をどれだけ果たしているかで、もう一方の役割をどれだけ果たせるかが決まる。
●持続可能な限界
 経済学者ハーマン・デイリーは、スループットが持続できなくなる限界を次のように示した。
 ・「再生可能な資源」の利用速度は、再生速度を超えてはいけない。
 ・「再生不能な資源」の利用速度は、再生可能な資源を(持続可能な速度で)利用することで代用できる速度を超えてはいけない。
 ・「汚染物質」の排出速度は、環境が吸収できる速度を超えてはいけない。
 再生可能な資源とは、土壌、水、森林、魚などである。再生不能な資源とは、化石燃料、良質鉱石、化石水などである。
 二番目の意味を具体例で説明すると、石油の利用速度は、埋蔵量を使い果たした後も同程度の再生可能エネルギーを入手できるように、一部を太陽熱収集器や植林に投資して再生可能な資源として確保できる速度を上回ってはいけないということである。
●再生可能な資源−食料
 1989年の人口は52億人であり、この年に世界中で生産された全ての食料が平等に分配されていれば、消費までのロスを40%見込んでも、最低限の食事なら59億人、適度の食事なら39億人、欧州水準でも29億人を養うことができている。世界では毎年1300万人が飢餓関連で死んでおり、5〜10億人が慢性的な飢餓状態である。これは、物理的な食料の限界ではなく、食料分配の平等化と、収穫後のロスを減らすことである程度対応できる。スループットにこそ問題があるのだ。更に、先進国では収穫量は実質的な限界に近づいているが、発展途上国では収穫量を10倍以上に増やすことも可能であることがFAO(国連食糧農業機関)の調査でわかっている。
 食糧生産には土地がかかせないが、耕作可能な土地は20〜40億haで、作付けが行われているのが15億haである。過去20年間の耕作面積は、農地開発分を侵食や砂漠化が上回ったため減少している。土地の限界に関して予測してみると、かつては豊富だった土地は、人口の幾何級数的増大のために急激に不足しつつあり、耕作可能地はここ1回の倍増期間の間に突然不足しはじめている。
 現在よりもさらに多くの土地が開発され、浸食された土地が復旧され、収穫量を2倍にすることができれば、世界人口が増大しても十分養っていける。しかし、これらが達成されなければ、食料は一部ではなく世界的に、しかも急激に不足することになる。
 土地以外にも水の入手可能性や、農業用化学薬品のシンクの問題が食糧生産を制限し、もはや限界を超えている。段々畑など、土壌の保全と質向上に役立つ方法も研究され、肥料や農薬がなくても多くの収穫を上げている例もある。世界中の農民が、土壌保全型の生態学的に健全な農業技術を取り入れはじめているのである。
 人間社会を通過する食料のフローが効率的で無駄のないものになれば食料生産を増大させる必要はなくなる。より多くの食料を栽培することは可能かもしれないが、食料のソースがやせ細り、シンクも汚染物質であふれているような地域では、事態を変化させない限り衰えていく農業資源基盤で、幾何級数的に成長する人口を養わなければならなくなる。
●再生可能な資源−水
 世界中の河川の年間総量は40,000km3で、人間による使用量は3,500km3であるので、十分余裕があるように見える。しかし、大部分は季節的なもので、28,000km3は海に流れ出るのである。実際には無人地域を流れる河川もあるため、そのため最終的に使用可能な安定流水量は、年間7,000万km3しかないのである。
 人類は、ダムという方法を用いて、限界量を3,000万km3も引き上げることにも成功している。その一方で汚染によって使用不能となる水が実際に使用している水とほぼ同量であるという途方もない無駄もしているのである。しかもダムの建設候補地は残り少なく、ダム反対の世論もあるため、ダムによる大幅な増加はこれ以上あまり見込めないのである。
 水の需要は、人口と資本の両方からの要求により幾何級数的に増えており、これはダムの建設スピードよりも早い。このような状況では、あと1回の倍増期間、つまり20〜30年程度しか需要を満たすことができない。あらゆる手段を講じ、40,000k m3全ての水を使用できるようになったとしても、あと3,4回の倍増期間、つまり100年程度しか維持できないのである。
 実際に水の限界を超えた場合どうなるかということは、社会が豊かか、近隣地域の余剰水量はどうか、近隣地域との関係はどうかなどの事情によって違ってくる。運河やパイプラインによって水を輸入したり、海水を脱塩したり、国内経済を水への依存度の低い経済に移行させたりといったことが可能であればよいが、こういった選択肢を持たない国では、厳しい配給と節水策、そして飢饉や水をめぐる紛争になったりもするのである。
 また、水資源が限られた場合、地下水ストックを持続不可能な形で使うという誘惑にも屈してしまう。この場合、地盤沈下や、帯水層への塩分の浸入などを招いてしまい、持続可能性はない。
 地球の水量は再生可能だが、拡大することはできず、水の限界を超えて成長した経済は、幾何級数的成長を続けられないのである。
●再生可能な資源−森林
 温帯地域の森林は、面積は安定しているが、土壌養分や樹種、成長率などでは劣化傾向にある。
 熱帯地域では、種が豊富で成長も早いが、脆弱であるため、現在の伐採方法では原生林は再生不可能な資源となっている。
 森林保全の例として、コスタリカでは一時期、放牧地の拡大を目指し森林が伐採されたが、牧草地は持続不可能で数年で食いつぶされ、土地は侵食され、地滑りの発生や、土砂流入による珊瑚礁の死滅まで引き起こした。しかし、残された森林の保全と復旧のための政府の行動は効果的で、国立公園や保護地域に指定し、学術研究やエコツアーとして雇用と国際交易を持続可能な形でもたらしている。
 熱帯林は今後どうなるかは、伐採地の遠隔地化や材質低下で伐採が困難になったり、残存森林を保護しようとする政治的圧力があったりすることなどにより、理論的に予測することは難しい。ただ、建材や紙製品や燃料としての需要の高まりとともに、世界のほぼ全域で森林が姿を消しつつあることは事実である。実際に中国やインドでは森林の伐採が再生速度を上回ってもいる。
 過剰収穫以外にも、大気汚染と酸性雨による被害が森林を脅かしている。ヨーロッパでは汚染は300億ドルの被害と推定されている。
 森林の消失は、森林を基盤とする製品の損失だけではなく、森自体が資源であり、機構調節、保水作用、侵食防止、生物種の生息地、二酸化炭素濃度の固定など非常に多くの機能を持っている。
 土壌や水と同じく、現在のように持続不可能な速度で利用する必要はない。先進諸国では無駄を排して、リサイクルを促進し、発展途上国では燃料効率の良いコンロを使うようにすることで、世界の木材需要は減るだろう。
 熱帯林の伐採は影響を最小限にとどめる方法で行われ、高収量の植林地は原生林を犠牲にせずに、伐採跡地や周辺に設けるべきである。伐採産業に対する政府の補助も廃止できる。また、高収量の農業技術があれば増えた人口が入植することもなくなるだろう。
 これらはすべて実行可能であり、実践もさえているが、世界中で一斉にこうした方策が取られていないために、森林は減っている。
●再生可能な資源−他の生物種
 地球上での生物種数さえわかっていないため、明確な答えは出ないが、一例として、マダガスカルでは20万種以上の既知生物がいたが森林消失のため原生種の半分が、エクアドルではプランテーションのために、25年間に5万種が絶滅したと言われている。種の絶滅の大部分は、熱帯林、珊瑚礁、湿地などで起きており、特に湿地帯は埋め立てや汚染による劣化などにより危機にさらされている。数値的にははっきりしない部分が多いが、生物種が加速度的に消失しつつあることだけは確かである。
 陸上全体の光合成による一次生産物のうち、40%を人間が利用しているという研究もある。直接利用は3%だが、森林の伐採、砂漠化、自然地域の居住地化などの間接利用が多いのである。これが倍増期間の間にどうなるのだろうか。もし、100%になると、全てが人間によって管理され、野生種の多くが絶滅し、拡大も失敗も許されない世界になるという意見がある。いずれにせよ、人間が一次生産物を取り込むと、他の生物に残された割合は少なくなり、生物種の消滅につながる。
 生物種の消滅は、食料、化学物質、薬品、遺伝子情報などの消失であることも意味し、経済的価値の損失ともいえる。生物種については一次生産物の奪取以外に限界があるはずだが、いずれにせよ、人類は科学的、審美的、道徳的に貧しくなるだろう。
●再生不能な資源−化石燃料
 人類経済におけるエネルギースループットは1860年〜1985年にかけて60倍になり、2020年までに需要は75%増えるといわれている。20年間で化石燃料の消費量は増加しているが、それ以上に埋蔵量が増えているが、これは化石燃料が多くなったという意味ではない。新たな埋蔵物も補充のきかない究極的なストックから来ており、そのストックは確実に減少しており、更に燃焼による汚染物質のシンクも限界が明らかになりつつある。
 化石燃料で、石炭はシンクの負担が大きく、石油はストックとシンクの問題がある。よって、天然ガスが石油に取って代わるとみられるが、その場合天然ガスのソースが加速度的に枯渇し、現在で240年分の供給量があるものが、50年足らずで無くなることさえ考えられるのである。このように化石燃料は持続不可能で、限られた資源であり浪費は許されず、持続可能なエネルギー源へ移行するための燃料として不可欠なのである。エネルギーを持続可能にするには、エネルギーの効率化と、太陽に基づく再生可能エネルギーの利用がある。
 効率化としては、白熱電球の4分の1となる蛍光電球の使用などがある。効率化による節約は、国の技術的、政治的状態で変わってくるが、北アメリカでさえ現在と同コストでも半分以下にできるとされている。発展途上国にもそれ以上に効率改善の余地がある。
 太陽、風力、水力、バイオマスなどの再生可能なエネルギーは、開発が遅れてはいるが、確実に進歩している。太陽から降り注ぐエネルギーは、化石燃料よりもはるかに大きいため、世界エネルギーの大部分をまかなっても十分である。しかし、エネルギー源を作る際に多少の資本や汚染が生じる場合があるし、管理や広大な設置場所が必要な場合もある。更に、これらのエネルギーのフローは永遠であるが大きさは一定なのである。しかし、効率よく利用すれば、電力需要を持続的に満たし、持続可能な社会のエネルギー基盤になることは確かだろう。
●再生不能な資源−原材料
 世界人口が増え、その人口がよりよい生活を望むなら、多くの原料が必要になる。サービス産業は工業基盤や世界中からの原料に依存しているのである。様々な原料が工業製品の中で複雑に行き交い、それらは地球をソースとし、シンクともしている。
 ソースとシンク、フローに伴う汚染には限界があり、豊かな国々での原料のスループットは無駄が多く、そこまでしなくても望ましい生活は維持できると多くの人は直感的に感じている。
 技術革新や環境保護の面から原料を減らす動きは、貧しい国ではソースが乏しいためだが、豊かな国ではシンクが乏しくなったために行われている。使用済みの原料の分別とリサイクルは、人間の経済における原料の循環という観点から持続可能性の第一歩である。しかし、リサイクルは問題の少ない末端部分の処理であり、通常は製造の段階で消費の数倍の廃棄物が生じるため、廃棄物のフローを減らすこと、つまりソースからの原料流出を減らすことが重要である。また、修理や再利用の促進により製品寿命を延ばすことができれば、再加工する必要がない分、リサイクルより有効である。
 しかし、地球規模では自動車や冷蔵庫を欲する人が何十億人もおり、更に人口は幾何級数的に増えている。原料に関してはシンクの限界に対する認識が高いが、需要が伸び続ける限りソースの限界も免れない。地殻に豊富に含まれる鉄やアルミニウム以外の鉱物は、希少かつ貴重な再生不能な資源が多い。金属鉱石の枯渇は、鉱石の質低下という形で現れ、精製に要するエネルギーが増大し、化石燃料の枯渇にも通じるのである。
 原料は、ソースの面からもシンクの面からも長期的には持続不可能であるが、増大する人口が物質的に十分な生活を営むには、リサイクルなど実現間近な技術が早急に必要であり、原料は地球からの限りある貴重な贈り物として扱うべきである。
●汚染と廃棄物のシンク
 1972年の人間環境会議からの20年間で、環境関連の省庁を持つ国は10倍以上になった。この20年間で、DDTなどの健康に害を及ぼす有害物質の指定と使用の禁止を行い、大気や水への煤や二酸化硫黄などの汚染物質排出を減らし、水質汚染に対しても一定の成果をあげている。しかし、これらの対策を有効に行えたのは、汚染対策に費やす資金を持つ先進国の例であり、東ヨーロッパや第三世界にとっては、最も削減しやすい汚染物質を取り除くお金さえない。
 現在のところ手に負えない廃棄物は、核廃棄物、有害廃棄物、温室効果ガスのような生物地球科学的プロセスを脅かす廃棄物である。
 各廃棄物はどの国もまだ問題を解決していない。
 有害廃棄物で最も手に負えないのが、人間が合成して作り出した化学物質である。もともと地球上に存在していないため、これを分解するような有機体もいない。長年にわたって化学物質を投棄し続けた結果、土壌や地下水が有毒化していることもある。汚染物質の中には、地球全体の大きなエネルギーや原料の流れに影響を与えるものがあり、この場合発生源がどこにあるにしろ、全ての人に影響を与える。この最も劇的な例がフロンであり、これは人類が初めて断固たる態度で地球の限界と対峙した点で重要であり第5章で述べられている。
 人類は、フロンの次には地球温暖化に取り組まなければならない。二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスが幾何級数的に蓄積されていることがこの20年で明らかになっている。地球の気候変化は簡単には察知できないが、地球の温暖化を裏付ける証拠は揃ってきている。しかし、人間の介入がない場合の温度変化や、地球温暖化の気候や生態系や経済への影響、温室効果ガスのフィードバックループの詳しい機構はまだ具体的にはわかっていない。ただ、温室効果ガスの濃度は過去16万年間でも突出して高く、限界を超えて累積しつつあることは確かである。この影響は何十年とかけてゆっくりと進むかもしれないが、もとの状態に戻すには何百年も要する。
 大量の汚染を排出する必要はない。汚染は進歩の象徴ではなく、効率の悪さと不注意の象徴なのである。汚染排出量の削減に投じたコストに対して、原材料や費用の節約などの効率よい結果がもたらされることは少なくない。
 エネルギーや原料の流量を供給源の限界以下に抑えれば汚染流量も減っていくことになる。人類が限界を認識し手遅れになる前に、協調して汚染物質に対して一斉に取り組めば、環境の限界に向かっている世界を方向転換させることができるのである。
●スループットの限界
 人類は持続可能な限界を超えてしまっている。この限界はあくまでスループットの限界である。限界といっても絶対的な壁があるわけではなく、そのうち負のフィードバックループによって否応なく減少するのである。問題は、人間の意志によるか、自然の作用に無理やり向かわされるかの違いとなる。
 問題によっては、フロンのように軌道修正のための行動が国際的にとられた例もある。しかし、総体的な行き過ぎにかんしての議論は殆どされておらず、技術変革への圧力もない。全体的に限界の問題を避けてと売ろうとする傾向が強いのは政治的理由による。限界についての議論は、真犯人は誰かといった論争になるのである。浪費的な豊かな国なのか、人口増加の激しい貧しい国なのか、それとも効率の悪い旧社会主義国なのか。地球に関する限り、結局、答えはその全てである、
 地球上のいかなる国や民族も、地球のソースとシンクに与えるインパクトは、人口(Population)、豊かさの水準(Affluence)、豊かさを支えるための技術が与えるダメージ(Technology)を掛け合わせたものとなる。これに従うと、南側諸国は人口、西側諸国は豊かさ、東側諸国は豊かさの部分を改革しなければならない。実際に選択肢を考えると、選択の幅は非常に広い。人間が地球に与えるインパクトは、全て合わせれば1000分の1以下に減らすことができる。しかし、実際には世界はそのいずれも実践していないのである。
●3章を通して
 第3章を通して、地球の限界を完全に知ることは難しいが、次の3つの点を上げることはできる。
 ・現在の人類社会の資源消費、廃棄物汚染のペースは持続可能でない。
 ・現在のスループットは過剰であり、技術や制度の変革で生活の質を維持、改善しつつ、スループットを減らすことは可能である。
 ・制度や技術が効率化しても、地球は既に限界に近く、あと1,2回の倍増期間内には限界に達する。

4章内容
 第4章では、ワールド3の基礎的な構造と、簡単な結果を示している。
●ワールド3の目的
 ワールド3の目的は、「人類経済が地球の収容力に接近する際に、どのような経路をとるかを理解すること」である。ここでいう経路には、138ページのように(右図)、連続的成長、S字型成長からの均衡、行き過ぎと振動、行き過と破局の4つがる。
 未来としてとり得る経路の中に破局という選択肢がある以上、振る舞いの可能性を理解することは重要である。ワールド3の目的は、振る舞いを探ることであり、未来の正確な状況を知ることではない。これは、正確に未来のある時点を予測することが不可能であり、一般的な振る舞いを予測することのみが可能であるためである。
●ワールド3のモデル
 ワールド3のモデルは「心的モデルとしての現実世界に従い」、「各要素の因果関係は非線形的であり」、「各要素は一般的に扱われており」、「要素同士が相互に関係しあっている」といった全体構造を持つ。
 心的モデルというのは、客観的な証拠と主観的な経験から形成される個々人が持つモデルである。現実の世界をモデル化する際に、何が「現実」なのかは定義できず、実際のモデルの指標となりうるのは各人が持っている心的モデルだけしかないため、ワールド3もこの心的モデルとしての現実世界に従っているのである。
 非線形性は一直線の関係でもないし、関係する変数全体によって厳密なものでもない。実際に135ページの図4−1(右図)にあるように、食料が増えると期待寿命は増加するが、すでに十分な栄養を得ている場合は食料を与えても期待寿命は増えない。逆に寿命を短くさせることさえ考えられるのである。
 一般的に扱われているというのは、例えば「汚染」を考えるとした場合、実際には、PCBや水銀といった多様な汚染物質が存在し、地下水に浸入したり空気中に拡散したりと様々な汚染方法があり、人間へ影響が出たり、物質が無害化するまでの時間もそれぞれ異なる。ワールド3では、排出された汚染が環境に被害を及ぼすまでに時間のずれを発生させ、汚染が無害化されることもあるといった一般的な特徴は入力されているが、個別の汚染物質について区別しているのではない。
 要素同士が関連しあった場合に起きる現象は、幾何級数的な成長となりうる正の関係と、変化方向の逆転や安定を導こうとする負の関係が存在するといったことで、既に述べられている。要素同士の関係の親密さは310ページ等を見れば実際にわかるだろう。
 ワールド3には225種類の変数が存在し、各変数が非線形性やフィードバック構造によって、互いに連動しながら変化することで、単純ながら、動的で複雑な変化を取ることになる。そうして、目的である未来の一般的な振る舞いをはじき出していくのである。
●ワールド3の特徴
 文章中に、特徴として、成長プロセス、限界、遅れ、侵蝕プロセスの4つが挙げられている。
 成長プロセスについては、正のフィードバックループという形で既に見ており、限界についても現在の世界の状況を前章で見た。よって、その他の部分について、説明していくことになる。
●ワールド3における限界
 ワールド3における限界は以下の4種類である。
 ・「耕地面積」最大32億haで、良質な(開発しやすい)土地から順に開発するため、土地開発にかかる費用は開発ごとに膨らみ、侵食や都市化により減退することもある。
 ・「土地収穫率」最大6500kg/haで、肥料の投入により非線形的に増やすことができるが、汚染により減退することもある。
 ・「再生不能資源」200年分あるとされ、耕地と同じく採取費用は次第に増大するものとしている。
 ・「地球の汚染吸収能力」数量的に不確定であるが、汚染の蓄積とともに減り、汚染量が減れば回復してくる。
 また、これ以外の制約による限界が暗黙のうちに示されていることもあるが、戦争や貿易障壁といったものは含まれておらず、人間は政治権力に惑わされることなく問題の解決に最善の努力を作るものとされるなど、多くの社会的限界を含んでいないためにワールド3の未来像は楽観的になってしまう。
●ワールド3における限界の設定
 ワールド3はシミュレーションであるため、実際にはありえないことも設定できる。すべての限界を取り除いた場合の結果が、151ページの図4−7(右図)であり、2100年において、人口は150億人程度で安定し、1990年比で工業生産が55倍、農業生産が8倍、汚染量は15%となっている。この結果はモデリングの原則の一つである、GIGO(Garbage In, Garbage Out:間違った入力では出力も間違い)を表しており、未来としては有用でない。この結果を別の観点から見ると、ワールド3には人口抑制の構造が含まれるが、資本に関してはそういった構造がないことを表しているとも言えるのである。
●限界と遅れ
 限界を示すシグナルが遅れたり、歪められたり、無視されたりすると、限界に正しく適応できず、行き過ぎを経験すぎることになってしまう。ワールド3でもフィードバックループ内には数多くの遅れが存在している。汚染物質が生物圏内に排出されてから人間や食料に損害を及ぼすまでの時間のずれや、出生率が人口に影響を及ぼすのは子供が出産年齢に達した時であるといった世代のずれや、工業資本が建築して立て替えるまで何十年といったサイクルのずれなどである。
 しかし、ワールド3には問題を理解する時間や、政策決定を下すまでの時間などは含まれていない。
●限界と遅れの実際
 実際に汚染物質が人間に損害を及ぼすまでの時間のずれの例をあげると、オゾン層の破壊があるが、これは次章で述べられている。
 ここでは、ポリ塩化ビフェニル(PCB)を説明する。PCBは化学的に安定である油状の不燃性物質で、1929年から200万トンもが生産され電気機器などに使われてきた。しかし、1966年にPCBが広範囲な環境中に存在することが確認された。PCBは水に溶けにくいが脂肪に溶けやすく、環境中に長く残留する。ある生命がPCBを取り込むと体内の脂肪組織に蓄積され、食物連鎖により更にその濃度が高まっていき、人間の脂肪や母乳に高濃度に蓄積されることになるのである。更に、PCBは免疫作用や内分泌の機能を妨げ、生殖機能や胎児の発育に影響を与える。このようにPCBは年月をかけ環境を汚染し続けていたのである。このため1970年代以降多くの国で、PCBの製造と使用が禁止された。90年現在、PCBの70%は使用されているか、捨てられた電気製品の中にあり、実際に大きな影響を残したにもかかわらず汚染として海洋に達したものは1%に過ぎない。残りの29%はまだ土壌や河川などに散らばっており何十年という時間をかけて生物の体に侵入してくるものと思われている。
 もう一つの例として、DCPaがあり、これは化学物質が地下水や土壌中をいかにゆっくり移動するかを示している。1960年代から使用が禁じられる90年までにオランダではジャガイモ等の栽培に土壌殺菌剤にDCPeと呼ばれるものが使われ、その中にDCPaという化学物質が含まれていた。これは地下水での残留期間が非常に長く、159ページの図4−9(右図)のように2000年以降数十年に渡って地下水の汚染が進むと見られている。
●限界と遅れのふるまい
 「S字型成長」を遂げるためには、収容力という限界を察知し、そのシグナルが成長するものに対して正確に伝えられ、成長はシグナルに即座に対応する必要がある。しかし、自然からの警告には遅れが伴うため、自ら限界を課さない限り行き過ぎになることは避けられない。
 成長する現象に限界を告げる警告や、警告に対する反応が遅れた場合は、環境の性質によって運命が変わってくる。
 環境が過剰ストレスを受けてもシステムを維持でき、負担が軽減されたら素早く自己修復してもとの状態を回復できる場合は、行き過ぎと軌道修正という振動を繰り返し、その後、限界以下の均衡状態に落ち着くのである。再生可能資源は、侵蝕されうるが、同時に自己回復能力もあるため、過剰利用が長期にわたらず、資源への影響も壊滅的でなければ、資源は回復することになる。振動は、下り坂においては、資源に依存する経済活動は低迷するし、人間の健康にも影響が出るので喜ばしくはなく、振動を避けるにこしたことはないが、致命的な問題というわけでもない。
 しかし、環境が自己修復できず、限界からの警告が遅れ過剰負担となっている間に環境が回復不能に損なわれてしまったら、振動ではなく破局という運命をたどることになる。再生不能資源は恒久的に失われるし、熱帯林が再生不可能な方法で伐採されたり、土壌が洗い流されたりすると、地球の収容能力は永久に低下してしまうのである。
●行き過ぎから破局へ
 行き過ぎから、振動と破局という振る舞いの違いは、システム内に侵蝕ループが存在するかどうかである。これは悪質な正のフィードバックループであり、事態をいっそう悪化させる方向へと導く。
 侵蝕ループの例は砂漠化のループである。牧草地において、肉食動物がいなくなると、生態系が侵蝕されはじめる。草食動物は過剰に増え、過放牧の状態となり、牧草は根まで食べつくされてしまう。草木が減ると土壌被覆も減り、表土が侵食される。表土が減ると、そこに育つ草木も更に減りいっそう土壌の侵食が進む。この悪循環の繰返しにより、土地の生産力は加速度的に低下し、やがて砂漠となるのである。
●ワールド3での侵蝕ループ
 ワールド3での侵蝕ループは砂漠化のほかにも以下のようなものがある。
 ・飢えた人々は短期的視点で土地を集中酷使するため、土壌の生産力低下を招き、更に食糧生産が減る。
 ・工業製品の投入を必要とする問題があった場合、既に設置されている資本プラントの質が低下し、問題へ投入する工業製品が優先されると、資本減耗への対処がより遅れ、資本ストックの劣化が進行する。
 ・減退傾向の経済で、一人当たりのサービスが低下すると、出生率が向上し、一人当たりのサービスは更に低下する。
 ・汚染水準があまりに高くなると、自然の吸収機能自体が損なわれ、汚染の蓄積速度に一層拍車がかかる。
●現実での侵蝕ループ
 侵蝕ループの中の、自然が持つ汚染吸収システムの損傷は特に潜行的で、最近になって様々な例が発見されている。
 例えば、大気汚染により大気中の不純物除去因子であった水酸基が破壊されると温室効果ガスであるメタン濃度が増したり、大気汚染による森林の死滅で温室効果ガスである二酸化炭素の重要なシンクが消えたり、肥料や酸性雨により土壌が酸性化し有害重金属が地下水等に溶け出したりといったことである。
 更に現実では、ワールド3に設定した以上に侵蝕ループが存在し、とくに顕著なのは社会秩序の崩壊が更なる崩壊を促すという社会的侵蝕である。どのような種類でも侵蝕を数量的に測定することは難しい。それは全システム的な現象で、複数の影響力が相互に関係しているためである。厳密な性質はわからないが、浸食作用が起こる可能性があるシステムは、破局に至る可能性を持つのである。
●ワールド3の結果−シナリオ1
 シナリオ1は数値として現実的と思われる値を設定し、世界は大きな政策変更もなく、農業、工業、社会の各分野でもこれまでのパターンに従って技術が進歩し、汚染抑制や資源節約のための特別な努力はなされない、という仮定に基づいている。しかし、現状のままだからといって、このモデル結果が最も実現性が高いわけではなく、数多くの可能性のひとつであるということに注意すべきである。
 このシナリオでは経済は成長を中止し逆戻りする。2000年を過ぎて汚染が著しく増加し、土地の生産力の低下を招き、2015年以降には食料総生産も減少し始める。同時期に資源も限界が見えはじめ、工業資本の投資を農業部門と資源部門で取り合うことになり、ついには資本の減耗に投資が追いつかなくなる。こうして工業資本設備が減りはじめ、工業部門からの投入に依存していたサービル部門と農業部門も縮小する。また、「遅れ」のために人口はしばらく増え続けるが、食料や保健サービスの低下により人口も減少に転じるのである。
●ワールド3の結果−シナリオ2
 シナリオ2は、シナリオ1に比べ2倍量の資源が地中に眠っていた場合である。シナリオ1に比べ、工業は20年長く成長を続け、その間に人口や汚染も増加する。汚染のピークはシナリオ1の30年後だが、汚染量は3倍以上であり、これは汚染量増加だけでなく、汚染吸収作用自体が損なわれているためである。汚染は土地の生産力低下を招き、それから先は結局シナリオ1と同じく、行き過ぎから破局という振る舞いをとることになるのである。
 シナリオ1とシナリオ2のどちらがより正しいかは問題ではない。いずれも未来を予言することはできないし、人間は自らシステム構造を変更することも、未来を変えることもできるからだ。重要なのは、両者のとるふるまいなのである。
●なぜ行き過ぎ、破局になるのか?
 様々な設定でのモデル結果は第6章、第7章で取り扱っているが、ワールド3では行き過ぎから破局というパターンが圧倒的に多い。
 行き過ぎになるのは、シグナルの遅れと、シグナルに対する反応の遅れが原因である。
 シグナルの遅れは、フィードバックの遅れである。蓄積されたストックが多ければ多いほど、長い時間に渡って行き過ぎになることができる。例えば森林は、何百年とかけて成長したストックがあるため、年間成長率を上回る速度で伐採することも一定は可能である。よって、単にストックが入手できるかどうかという点だけをシグナルと受け取ったとすると、その社会が破局に至るのは明らかである。
 シグナルに対する反応の遅れは、森林が成長したり、人間に汚染物質が蓄積したり、資本設備が減耗したり、人々が再教育されるまでの物理的なものである。システムは短期間では変わらない。正しいシステムを維持するには、何十年も先を見る必要があるのだ。
 行き過ぎを破局に導くのは非線形的性質による侵蝕作用である。そこには閾値のようなものが存在する。食料がある一定量を超えると急激に死亡率が上昇したり、土壌の侵食も作物の根より深く起こることで急に作物収量が減少したりするのである。
 どのようなシステムでも、フィードバックループの遅れと物理的反応の遅れがあり、閾値と侵蝕メカニズムを持つなら、限界をゆっくりと探しながら進まない限り、特に加速度的に進むなら破局は避けて通れないのである。
 また、ワールド3には今まで述べたように次のような仮定があるのも、破局傾向が強い要因である。
 ・人間は本質的に成長を求め、人口や経済は成長する場合は幾何級数的に成長する。
 ・ソースとシンクには限界がある。
 ・限界を知らせるシグナルは、歪められたり、遅れたりする。更にそのシグナルへの対応にも遅れが生じる。
 ・システムの限界は、単なる限りがあることだけではなく、過度のストレスにより侵蝕されうることがある。
●破局をとめるには?
 行き過ぎの状態にあるからといっても必ず破局になるわけではないが、すぐに原料とエネルギーのスループットを減らさなければならない。現在の世界経済は、多くの無駄と非効率が存在するため、生活の質を向上させながらスループットを減少させることは十分可能である。また、限界を可能な限り引き上げ、侵蝕も防止、修復しなければならない。最終的には、二度と行き過ぎが起きないように、人口と資本の成長を減速させ成長を止める、限界のシグナルに対する反応を上げ、進路選択で長期的な損得を判断するようなシステムを、再構築しなければならない。ワールド3におけるこれらの変化があった場合の様子は、第6章、第7章で述べている。

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