第1巡:紹介:岡田 担当分

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発表:2003/04/24

BEYOND THE LIMITS 「限界を超えて」

文責 岡田 裕介

第5章「限界を超えた地点からの引き返し−オゾン層破壊の場合」

 この章では、人類がオゾン層の破壊という1つの環境の限界に直面したときに何を学び 引き返すことに成功したかということを紹介している。科学者たちがオゾン層の破壊につ いて発表し、それに対して政府や企業がどのように行動したか、また中立的な立場として 国連がどのような役割を担ったかが述べられているが、これには急激な成長、限界、政治 システムと自然システムの反応の遅れ、行き過ぎというポイントが明確に現れている。
 オゾン層は成層圏に存在する。オゾンは太陽光線中のUV−Bという有害な紫外線波長を 吸収してくれる。このオゾンが破壊されることによって、皮膚ガンの患者が増え、緑色植 物が減少し、あらゆる生態系のバランスが崩れることが考えられる。オゾンの破壊過程で 問題となるのは、フロンから発生する1個の塩素原子が何度も再生しオゾンを破壊するサ イクルを行い、またフロンが合成されてから成層圏に到達するまでにおよそ15年という 長い時間的遅れが存在することである。
 オゾン層破壊について1974年にアメリカ人によって論文が発表された。これが政治 に素早く浸透した理由は、筆者たちが精力的に世間に知らせたことと、大規模な環境保護 運動が存在していたことによる。これにより1978年にエアゾールガスとしてのフロン の使用をアメリカ議会は禁止した。
 1984年、イギリスの南極調査団により成層圏でのオゾンの減少が観測され、翌年に は南半球のオゾンホールについての論文が発表された。なぜ南極大陸上空なのかなどオゾ ンホールの解明が数年にわたり行なわれた。それによると、南極大陸は海に囲まれている ため風が上空を旋回し風の渦を作ることで上空の空気を閉じ込めてしまう。また、冬の南 極上空の成層圏は最も気温が低く、空気中の水蒸気が結晶となりその表面がオゾンの破壊 因子である塩素を放出する化学反応を促進する。塩素原子はすぐにオゾン破壊の連鎖に加 わらず、春の太陽が戻ってくると大量に反応する。その一方、日光が戻るため南極の空気 は他の空気とまざり、オゾンの減少は他の地域に拡散する。北半球では観測されることは 少ないが、確実に世界のオゾンは著しく減少している。フロンが成層圏に届くまでの時間 や塩素の寿命が長いため、フロンの放出を中止しても100年はオゾン破壊が続くと考え られる。
 このオゾンホールの存在が明らかになってから、オゾン層保護の議定書が最初に調印さ れたモントリオール会議までの間に科学界、政治界、企業界に動きの変化が起こったこと は間違いないであろう。しかし、これには国連環境計画(UNEP)の働きがあったから である。UNEPは政治的手続きの幹事役となり、中立的な話し合いの場を提供した。 と同時に、ヨーロッパやアメリカの環境団体も政府に圧力をかけた。このような圧力を受 け、各国政府は予想以上の速さで1987年モントリオールにて、「オゾン層を破壊する物 質に関するモントリオール議定書」に調印した。これには主要生産国を含む36カ国が調 印したが、まもなくこの程度の削減では不十分であることがわかってきた。それはすでに 生産放出されたが成層圏に到達していないフロンが大量にあるため、図5−6のようにこ のペースでも現在の2倍の量となる。モントリオール議定書が不十分であった理由は、こ れからフロンの需要が大量に生じていく第三他界のほとんどが調印しなかったことにある。 その後UNEPの下で再び交渉が続行され、1990年、ロンドンにて92カ国が200 0年までに段階的にすべてのフロン生産を撤廃することに合意した。
 この間に産業界ではフロンの代替物質の研究がおこなわれた。それらのいくつかはフロ ンよりも安価で経済的にも節約につながる。また、生産されたフロンの放出を減らす技術 も開発された。しかし、それでも1991年のNASAの発表では、オゾン破壊が予想し ていた速度の2倍で進行していることが明らかになっている。

 このことから私たちが学ぶべきことはなんであろうか。以下にまとめる。
・科学的な証拠がなくても国際協力を生み出し行動することで、限界を超えないように維 持することは可能である。
・問題の処理に際し、世界政府は必要ではない、しかし、地球規模での学術的な協力体制 や情報システム、話し合いの場が必要である。
・即座にではなくとも、必要性を感じれば素早く対応することができる。
・事態に関する情報が不十分であれば、協定に柔軟性をもたせ、定期的に見直す必要があ る。また、環境を絶えず監視して報告する必要がある。
・主要な当事者の全員の関与が必要となる、それは、UNEPのような国際交渉の進行役、 リーダーシップのとれる国家政府、柔軟で責任感のある企業、政策決定者と意見を交換 できる科学者、環境保護運動家、環境情報に機敏に反応する消費者、さまざまな制約下 でも適応技術を開発できる技術者、などである。

第6章「技術革新と市場メカニズムで破局は避けられるか」

 この章では、ワールド3によるさまざまなシミュレーション結果が紹介されている。あ らゆる技術の開発やどんなに市場がうまく働いたとしても、それが世界の変化のすべてで あるならモデルは破滅のシナリオしか生まないと述べている。この議論の前に私たちが注 意すべきことは、それぞれのシナリオは決して未来を予言するものではなく、また正確な 数値や展開を読み取るべきものでもないということである。技術や市場がモデルの中でど のような機能と限界をもつのかということ見ていく。  さまざまなモデルの中で一般の人々の考えは、ある限界に対して資源の不足または汚染 物質の蓄積が始まる。市場の作用で資源は相対価値が上昇、汚染には外部費用が生じる。 それに反応して消費者や業者がその資源の使用を抑制し、技術を開発する。このように需 要と供給の市場の作用で社会は希少性や汚染を克服する。このモデルは技術、市場の相互 作用に依存していて、負のフイードバックループを形成している。ワールド3でもこのル ープを取り入れていて、この機能は需要があり資本が調達可能であれば自動的に作用する ように組み込まれている。これらの技術は現実の市場システムに発生するような遅れや不 正確さはすべて排除してある。その一方、これらの技術のほかに発動させない限り効力を 生じない技術もふくまれている。この後から始動させる技術には資本を要し、世界的な実 施に遅れが生じる。通常は20年とする。またシナリオ2と同様に2倍の資源量を想定し ている。このモデルに対して一度に1つずつの変化を取り入れ、個々の影響を理解し、す べての変化が起きた時の相互作用を考えていく。

では、以下シナリオ3からシナリオ7まで説明していく。

・シナリオ3(図P217)

このシナリオでは地球の汚染が重大な影響を及ぼす前に世界が75年水準まで汚染を 削減することを決意し、それに向かって計画的に資本を分配すると仮定している。この シナリオでは、汚染は増加を続けるがこれは汚染防止策の実施に要する時間の遅れや、 農業工業生産の成長によるものである。汚染はかなり低い水準に抑えることができるが、 次第に土地の生産力が減少を始め、収穫量を維持するために農業関連に大量の資本が投 入される。一方、人口が増大するため一人当たりの食料は減少し、資本減耗を補うこと ができずに工業生産も次第にピークを迎え、一人あたりの工業生産も減少し経済が衰退 し破局が始まる。シナリオ3では、汚染の大幅な削減に成功するものの、食料の危機が 起こる。

・シナリオ4(図P219)

このシナリオでは、シナリオ3の汚染防止策に加えて農業収穫率を高めることを決めて いる。この場合も世界的な普及には多くの資本と20年の時間がかかる。これによって シナリオ4の土地の収穫率は伸び続ける。しかし、シナリオ3の図と比べてもわかるよ うに、食糧生産としては大幅に増加したり期間が長くなったりしているわけではない。 その理由は、土地自体が少なくなっていることにある。このモデル世界では、集約的な 農業な結果、土地が急速に浸食される。これを正のフイードバックループの中で繰り返 し、経済からの資本の投入を余儀なくされる。しかし、そのときには他の資源も同じよ うに資本を要求する。それではこれに土地保全の技術を加えるとどうなるであろうか。 シナリオ5を見てみる。

・シナリオ5(図P221)

このシナリオではシナリオ4の技術に加え、土地の浸食を三分の一に減らす計画を実施 する。この計画には資本は必要としない。この結果は、資源、汚染、土地のいずれかの 危機ではなく、そのすべてが同時に重大な局面を迎えるものである。2020年までは それなりに経済は成長していく。しかしそれ以降は要求される資本が経済の供給できる 量を超えてしまい破局を迎える。

・シナリオ6(図P223)

シナリオ5に資源節約の技術を取り入れることにする。最終的には資源の消費量を75 年水準にまで引き下げる。この結果を見ると、2050年ころまでは経済はスムーズに 成長を続ける。人口は100億人ほどで安定するが、その安定の理由は出生率の減少に 伴う安定ではなく、死亡率の上昇による安定である。技術の向上により突然の破局は免 れたものの、工業生産は減少を始め、生活水準は低下していく。こうして経済が衰退し ていき、高度な保険サービスが維持できなくなるため死亡率が上昇する。

・シナリオ7(図P225)

では、シナリオ6の技術がもっと早い時期にあった場合を考える。20年ではなく5年 で世界に普及するものとする。この結果は図を見ればわかるようにシナリオ6よりも長 く成長を続ける。この世界は高度に技術化された質素な社会といえる。世界危機のため に自らが早い行動を起こすことで適度な生活水準を保つことができている。しかし、成 長に伴い大量の人口が存在する。それらのすべてが適度な生活を続けることは結局地球 の限界にストレスを与え続けることになり、限界を引き伸ばすための費用の増加により 工業成長がとまり、やがては衰退をはじめるだろう。

 ワールド3には不確実な要素が多く含まれている。それは、地域による貧富の差がない ということ、市場の機能が完璧に作用するということ、政治的決定が遅れなく下されると いうこと、資本や資源を生産的経済から流出させる軍事部門が存在しないということ、ま た逆に技術が予想よりももっと進むかもしれない。このような不確実性により上記のシナ リオがその通りになるとは考えられない。ここで学ぶべきことは、ある1つの限界を取り 除こう、または限界を引き上げようとするとき、別な限界がたちはだかるとうことである。 二つ目の教訓は社会が技術を駆使して限界を引き伸ばすことに成功すればするほど、将来 的にいくつもの限界に同時に突入する可能性が強くなるということである。破局のモデル において多いパターンは資源などの限界によるものではなく、それらに投入する資本力が 不足するというパターンである。成長の限界による費用の高騰の例は二酸化硫黄と窒素酸 化物の例が挙げてある。
 また、ワールド3の究極的な限界は「時間」である。幾何級数的成長の中では、ゆっく りとした変化なら対応できた対処方法も有用ではなくなる。この例として、オイルショッ クが挙げられている。価格高騰の結果、より石油を生産するための設備へ投資され、消費 者側も石油を節約するような技術の開発に取組んだ。電力会社は代替エネルギーの開発に 力を入れた。しかし、これらには時間的な遅れが存在していて、需要と供給のバランスが 取れ始めたころにはこれらの技術は行き過ぎてしまっていた。これにより原油の価格は下 落し、これらのシステムを反対の方向へと向かわせ結局また高騰を生じる。この価格の変 動は、資源の枯渇を知らせるものではなく、やがて迎える物理的限界を見通せないまま、 行動が間に合わなくなるまで使い果たしてしまうのである。
 次に漁業の例を挙げている。世界の漁業産業は驚くべき技術の発展を見せている。しか し、それによってストックを使い果たそうとしている。この危機を救うためには、技術や 市場以上のものが必要となる。それは持続可能な成長を目指すという目標である。人間社 会はその中で最も価値をおいているもののために働く。成長を目標とするなら限界を迎え るまで限りなく成長をしようとするだろう。しかし、持続を目標とすれば、それを達成す ることもできるのである。

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