第2巡:紹介:古宮 担当分

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発表:2003/05/22

「知識創造企業」第3章、第4章の紹介(5月22日)

基礎プロジェクト2 第2グループ B班
30789 古宮正憲

第3章「組織的知識創造の理論」

 まず理論の説明に入る前に情報と知識の相違と類似について述べる。ここで二つの相違と 一つの類似が挙げられる。一つ目の相違点として、知識は情報と違い、「信念」や「コミット メント」に密接にかかわり、ある特恵の立場、見方、あるいは意図を反映していることであ る。二つ目の相違点は、知識は情報とは異なり、目的を持った「行為」にかかわってくる点 である。類似点としては、両方とも特定の文脈やある関係においてのみ意味を持つものであ るという点である。

 知識創造の理論において最も重要なのは、「暗黙知」と「形式知」と呼ばれる、知識の二つ の次元(認識論的次元)の区別である。暗黙知とは、特定の状況における個人的な知識であ り、主観に基づく洞察、直感、勘などが含まれる。それゆえ、体系的・論理的に処理して他 人に伝えることはとても難しいものである。一方、形式知とは言葉や数字で厳密に定義、表 現できるものであり、他人との共有が容易なものである。暗黙知と形式知の意味するところ は明確に区別されるべきものではあるが、完全に別々なものではなく、相互補完的なもので あり、両者は相互に作用し合い、お互いに成り変わるものである。
 また、個人による知識創造だけでなく、組織による知識創造に焦点を当てているため、知 識創造の主体に関する次元(存在論的次元)も念頭に置きつつ、知識創造の理論を提示して いく。

 人間の知識が暗黙知と形式知の社会的相互作用を通じて創造され拡大されるという前提を たてたとき、四つの知識変換モードが考えられる。すなわち、(1)個人の暗黙知からグルー プの暗黙知を創造する「共同化」、(2)暗黙知から形式知を創造する「表出化」、(3)個別 の形式知から体系的な形式知を創造する「連結化」、(4)形式知から暗黙知を創造する「内面 化」である。

 共同化とは経験を共有することによって、メンタル・モデルや技能などの暗黙知を創造す るプロセスである。人は言葉を使わずに他人の持つ暗黙知を獲得することが出来る。修行中 の弟子がその師匠から言葉によらず観察、模倣、練習によって技能を学ぶのがその一例であ る。
 表出化とは暗黙知を明確なコンセプトに表すプロセスである。これは暗黙知がメタファー、 アナロジー、コンセプト、仮説、モデルなどの形をとりながら次第に形式知として明示的に なっていくという点で、知識創造の真髄である。言葉表現はしばしば不適当、不十分、で一 貫しないことが多いが、そのようなイメージと表現の不一致、ギャップは人間の思考や相互 作用の材料となりうる。ホンダのシティーを開発する際に「クルマ進化論」というメタファ ーを開発チームに投げかけ、チームは車の究極の姿として、人のスペースを最大化する「マ ン・マキシマム、マシン・ミニマム」というコンセプトを考え出したというのが一例である。
 連結化とはコンセプトを組み合わせて一つの知識体系を作り出すプロセスである。一人一 人は書類、会議、電話、インターネットなどを通じて知識を交換しながら組み合わせる。学 校における訓練などが、この知識変換の形となる。
 内面化とは形式知を暗黙知へ変化させるプロセスである。個々人の体験が共同化、表出化、 連結化を通して、メンタル・モデルなどの暗黙知ベースに蓄積されると、その個人にとって 大きな財産となる。主に内面化は行動による学習やサクセス・ストーリーを読んだり聞いた りすることによって起こる。

 知識の各変換モードによって創られる知識の内容は当然のことながら異なる。共同化によ って生み出される「共感知」には、共有されたメンタル・モデルや技能などが含まれる。表 出化は「概念知」を生み出す。連結化によって生み出される「体系知」には、たとえば原型 (プロトタイプ)やそれに使われる要素技術などがある。内面化によって生み出される「操 作知」は、プロジェクト管理、生産工程の立ち上げ・ルーティン化、新製品の使用、経営方 針の実施などの体験によって体得された知である。
 これらの異なった知識内容は、相互に作用しながら、知識創造のスパイラルを形成する。 また、組織は知識をそれ自体で作ることは出来ず、組織的知識創造の基盤である個人の暗黙 知がこれらのモードを回りつつ組織的に増幅されていく。以上をまとめた概念図を資料に示 しておく。

 次に、知識スパイラルを促進するために組織レベルで必要となる五つの要件を考察してい く。その五つとは(1)意図、(2)自律性、(3)ゆらぎと創造的なカオス、(4)冗長性、 (5)最小有効多様性、である。

 知識スパイラルを動かすのは「目標への思い」と定義される組織の意図である。目標とし ての意図を明確にすることによって、個人の思考や行動を組織として方向付けしながら促進 することが出来る。
 知識スパイラルを促進する第二の要件は自律性である。組織のメンバーには、事情のゆる す限り、個人レベルで自由な行動を認めるようにすることによって、組織は個人が新しい知 識を創造するために自分を動機付けることが容易になり、独自のアイデアが自律的な個人か ら生まれ、チームの中に広がり、やがて組織全体のアイデアとなるきっかけを生む。
 第三の組織的要件は、組織と外部環境との相互作用を刺激するゆらぎと創造的なカオスで ある。組織にゆらぎが起こるとそのメンバーは日常行動、習慣、認知枠組みの「ブレイクダ ウン」に直面する。「ブレイクダウン」とは、快適な習慣的状態が中断されることを意味する。 そのようなブレイクダウンに直面したときこそ我々の根本的な思考やものの見方を見直す機 会である。組織のメンバーが断続的に既存の前提に疑問を持って考え直すこのようなプロセ スによって、組織的知識創造が促進される。カオスは、組織が本当の危機に直面したとき自 然に発生するが、カオスはまた、危機感を与えるために組織のリーダーが挑発的な目標を組 織成員に示すことによって意図的に作り出される。後者のようなカオスを、「創造的なカオス」 といい、組織内の緊張を高めて、危機的状況の問題定義とその解決に組織の構成員の注意を 向けさせる。
 第四の要件は冗長性である。ここでとりあげる冗長性とは、組織全体やそのさまざまな活 動や職務に関した情報を意図的に梼成メンバーに重複共有させることである。そのことによ って、他のメンバーが言語化しようと努力している事柄を感じ取ることが出来るので、暗黙 知の共有の促進につながる。また、重複情報を共有することによって、個々人は組織におけ る自分の位置を知ることが出来る。
 最後の要件は最小有効多様性である。これは、複雑多様な環境からの挑戦に対応するため には、組織は同じ軽度の多様性をその内部に持っていなくてはならない、ということである。

 次に、上記の四つの知識変換モードと組織知識創造を促進する五つの要件により組織的知 識創造が行われるプロセスを、時間の次元も組み込んだ統合的なファイブ・フェイズ・モデ ルを提示して考秦する。このプロセスは(1)暗黙知の共有、(2)コンセプトの創造、(3) コンセプトの正当化、(4)原型の構築、(5)知識の転移、の五つのフェイズから成り立っ ている。組織的知識創造のプロセスはほぼ共同化に照応する暗黙知の共有から始まる。個人 の中にある手付かずの暗黙知がまず組織の中で増幅されなければならないからである。第二 のフェイズでは自己組織チームによって共有化された暗黙知が、新しいコンセプトという形 の形式知に変換される。これはほぼ表出化と等価である。第三フェイズでそのコンセプトは さらに追求する価値があるか評価してから正当化される。第四フェイズでは、正当化された コンセプトが目に見える形である原型に変換される。最後のフェイズでは作られた知識が一 部門の各部署から他の部署へ、一部門から他部門へ、組織内から組織外へと移転される。こ のプロセスの概念図を資料に示しておく。

第4章「知識創造の実例」

 上記の知識創造プロセスの一つ目の例として、松下電器による「ホームベーカリー」の開 発と、それが社内の各所へ及ぼした影響を取り上げる。ホームベーカリーの開発では、五つ のフェイズを三度循環することとなる。
 七十年代後半に入ると日本の家電市湯は成熟をはじめ、厳しい価格競争下で松下電器は中 核ビジネスの強化と苦手分野への参入の資源集めを目的に、「超家電」というスローガンのも と、83年、家電からハイテク・産業用製品に焦点を移した。この戦略転換は、炊飯器事業 部、電熱器事業部、回転機事業部の三事業部の電化調理事業部への統合へつながった。事業 部の統合により生まれた危機感がもたらした「創造的なカオス」に触発された事業部の一人 一人は、自分たちは何をすべきかという個人的「意図」を模索し始めた。この大規模な統合 はまた、「最小有効多様性」をもたらし、さまざまな部署から集まったマネージャーの合宿で はさまざま議論を行い、情報の「冗長性」を促進した。さらにこの計画の「意図」として、 家庭用調理機器は食事の準備を簡単にすると同時に、それをおいしくかつ栄養豊かにするも のでなくてはならないということから、「イージーリッチ」というコンセプトが生まれた。
 第一のサイクルでは、「イージーリッチ」というコンセプトが創造され、そんコンセプトの 正当化までは出来たものの、外側は焼けすぎて中身は生というパンとは呼べないものしか作 り出せないものとなってしまった。発酵と焼き上げは気温や環境に大きく左右される微妙な 工程であり、そのため複雑な制御システムをしっかり作らなければならなくなった。
 第二サイクルにおいてチームの一人がパン職人に弟子入りして、その練り上げのノウハウ を暗黙知として共有することから始まり、「ひねり伸ばし」という言葉を使ってコンセプトを 表出化し、エンジニアにパン生地を練るへらの強さやスピードを示唆し、開発部は容器の内 側に特殊なうねをつけることでそれをうまく具現化することに成功した。
 第三のサイクルにおいては、コストを三万円代に抑えるという目標に向かって努力がなさ れた。イーストのための冷却機を取り外すために、練の途中でイーストを加えるという「中 メン」と呼ばれる方法を用いることで可能にした。これはメンバーの暗黙知の共同化と表出 化の結果生まれたコンセプトであった。ただこの改良をすることによって発売時期が四ヶ月 遅れるということになったが、当初打ち出した「イージーリッチ」という組織の意図に沿っ て品質の方を優先させることとなり「中メン」は正当化され、安価なホームべーカリーが結 果的に大ヒット商品になったというわけである。
 ホームベーカリーのサクセス・ストーリーは、口コミと社内報によって松下全体に広まっ ていった。あらたに作られた知識は開発チームを超えて他の事業部社員に移転された。

 次の例は、同じく松下電器による、企業レベルでの最初の知識創造を取り上げる。将来会 社のリーダーになるのは今の若い人たちだからという理由で、二十代と三十代の社員二百人 が集められ、次世代へのビジョンを議論し、松下社員のあるべき姿として「自発的個性集団」 というコンセプトを創造した。若手社員たちは、人々は物質的豊かさに加えて精神的な満足 を求めるようになるだろうと感じ、そのような社会においては、企業のメンバーは自発、野 心、創意、知性といった価値を持つばかりか、良き市民・良き家族の一員・良き個人でもあ る「自発的な個人」をめざすべきとした。このコンセプトを、二十一世紀へのビジョンを作 るために部長クラスを集めたヒューマン21委員会が正当化した。このケースでは、ここま での第三フェイズまでで次のサイクルへと移行した。
 「自発的な個人」というコンセプトを実現させる一つの手段として、業務効率の悪さを改 善するしようと二千時間を越えていた年間平均時間を千八百時間に減らそうというMIT'93 というプロジェクトを設けた。労働時間を減らして創造性を諌めるためのMIT'93というコ ンセプトは「自発的な個人」を育てるという目的に照らして「正当化」され新しい業務システ ムの「原型」に発展した。

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