第2巡:紹介:篠原 担当分

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発表:2003/05/22

基礎プロジェクト2(5/22)
『知識創造企業』
第5章、第6章 担当 30792 篠原大典

第5章

 この章では、組織的知識創造を最大限に促進する経営プロセスに焦点を当てている。 まず最初に、トップダウン・モデルとボトムアップ・モデルという、経営プロセスについ ての二つの支配的なモデルについての検討があり、3つ目として、ミドル・アップダウン という新しいモデルを提案している。

1.トップダウン・マネジメント
  トップダウン・マネジメントは、基本的には古典的な階層組織(ヒエラルキー)モデ ルである。組織のピラミッドのトップにいる役員が作ったプランや命令が、階層組織の下 の方の組織成員に降ろされ、実行されるというものである。この伝統的な組織モデルの背 景には、トップ・マネージャーだけが有能で知識を創ることを許されている、という暗黙 の前提がある。この経営プロセスにおいての知識変換は、連結化(形式知から形式知へ) と内面化(形式知から暗黙知へ)に絞られた部分的なものである。知識創造をトップがコ ントロールするため、形式知を扱うのに向いているが、組織の第一線での暗黙知の成長を 無視している。このモデルは、GEのCEO、ジャック・ウェルチの例を挙げて説明され ている。

2.ボトムアップ・マネジメント
  ボトムアップ・マネジメントはトップダウンの逆である。階層と分業の代わりに自律 性(オートノミー)が強調され、ボトムが創り、そのほとんどを自分たちでコントロール するのである。トップは命令や指示をほとんど出さず、企業家精神を持った第一線ロアー 社員をサポートする。知識は、相互に作用しあう個人の集合(グループ)ではなく、一人 ひとり自立的に働くのを好むロアー社員によって創られる。知識変換については、共同化 (暗黙知から暗黙知へ)と表出化(暗黙知から形式知へ)に絞られている。このモデルは、 暗黙知の処理は得意であるが、その自律性重視の傾向のために、暗黙知を組織全体に広め て共有することをきわめて難しくしている。具体的な例として、3Mのディック・ドゥル ーやアート・フライ、その他の企業家的な社員を例に挙げて説明されている。

3.ミドルアップダウン・マネジメント   この本の著者らが主張する、経営プロセスにおける新たなモデルで、知識創造のマネ ジメントにおいて上記二つの伝統的なモデルよりも優れていると主張している。このモデ ルでは、名前の通りミドル・マネージャーが知識マネジメントの中心、すなわち社内情報 のタテとヨコの流れが交差する場所に据えられている。ミドルは、トップが持っているビ ジョンとしての理想と第一線社員が直面することの多い錯綜したビジネスの現実をつなぐ 「架け橋」になるのである。ミドルは、知識創造プロセスの5つのフェイズ(暗黙知の共 有、コンセプトの創造、コンセプトの正当化、原型の構築、知識の転移)を、トップと第 一線のロアーを巻き込みながら実行していく。そしてこのミドルアップダウン・マネジメ ントというモデルは、四つの知識変換のモードすべてを実行するのにより適した環境を提 供する。キャノンのミニコピア開発が、このモデルの例として紹介されている。

  これら3つの経営プロセスのモデルを取り上げた後、著者らは、そもそもトップ・マ ネージャー(経営陣)、ミドル・マネージャー(中間管理職)、第一線社員という言葉自体 が、トップダウンで階層的な伝統的組織に由来する名称・肩書きであるとし、階層性とタ スクフォース両方の強みを利用する組織構造のためにもっとふさわしい肩書きを作る必要 があるとしている。社内で知識創造に従事する全員を指す「ナレッジ・クリエイティング・ クルー」をはじめ、第一線の社員(+ミドル・マネージャー)に相当する「ナレッジ・プ ラクティショナー」、ミドル・マネージャーに相当する「ナレッジ・エンジニア」、トップ・ マネージャーに相当する「ナレッジ・オフィサー」である。

・「ナレッジ・プラクティショナー」
ナレッジ・プラクティショナーの責務は、暗黙知と形式知の両方を蓄積し創造するこ とである。また、ナレッジ・プラクティショナーは二つの補完的なグループ(ナレッ ジ・オペレーターとナレッジ・スペシャリスト)からなる。前者は経験に基づいて体 化されたスキルの形で豊かな暗黙知を蓄積・創造する。後者は、伝達可能でコンピュ ータにも蓄積できる技術的、科学的、あるいはその他の量的なデータの形できちんと 構造化された形式知を扱う。ナレッジ・プラクティショナーに必要な資質は以下の5 つである。
(1)高度な知的水準を持っていなければならない
(2)自分のものの見方に応じて世界を創り変えることへの強いコミットメントが必要である
(3)会社の内外で様々な体験をする必要がある
(4)顧客あるいは会社の同僚と対話を上手に行う技術を持っていなければならない
(5)率直な議論ないし討論を行うために度量を広く持つ必要がある

「ナレッジ・エンジニア」
ナレッジ・エンジニアの責務は、暗黙知を形式知に、形式知を暗黙知に変換すること による四つの知識変換の促進である。会社のビジョン(すなわち理想)にしたがって 新しい知識を工夫しながら創り出す、つまり現実を創り変えるときに知識変換をリー ドする。とりわけ、暗黙的なイメージや思いを明示的なコンセプトに変換するとき(表 出化)に最も影響力をもつ。第一線社員の暗黙知と役員たちの暗黙知を統合し、それ を明示化して、新しい技術、製品、システムに組み込むのである。ミドル・マネージ ャーが有能なナレッジ・エンジニアであるための資質は次のようなものである。
(1)プロジェクトを調査、管理する第一級の能力を持っている
(2)新しいコンセプトを創るための仮説設定技能を身につけている
(3)知識創造のための様々な手法を統合する能力がある
(4)チーム・メンバーのあいだの対話を促すコミュニケーション技能を体得している
(5)メタファーを用いて、他の人がイメージを創り出し、それを言語化するのを助けるのがうまい
(6)チーム・メンバー間の信頼感を醸成できる
(7)歴史を理解し、それに基づいて未来の行動経路を描き出す能力を持っている

「ナレッジ・オフィサー」
基本的な役割は、企業レベルで組織的知識創造を全体的にマネージすることである。 【1】会社はどうあるべきかについてのグランド・コンセプトを創り出し、【2】企業ビジョ ンや経営方針声明の形をとった知識ビジョンを確立し、【3】創られた知識の価値を正当 化するための基準を設定することによって、会社の知識創造活動に方向感覚を与える のである。ナレッジ・オフィサーとしてのトップ・マネージャーは、理想的には次の ような資質を持っていなければならない。
(1)会社の知識創造活動に方向感覚を与えるために知識ビジョンを創り出す能力
(2)知識ビジョンとその基盤である企業文化をプロジェクト・メンバーに伝えて理解させる能力
(3)組織の基準に基づいて創られた知識の質を正当化する能力
(4)プロジェクト・リーダーを間違わず選ぶ、いわくいいがたい直感的な能力
(5)プロジェクト・チームにたとえばとてつもなく挑戦的な目標を与えてカオスを創り出す思い切りのよさ
(6)チーム・メンバーと濃密に相互作用しながら彼らからコミットメントを上手に引き出す技能
(7)組織的知識創造の全体プロセスを指揮管理する能力

第6章

  この章では、前章でのミドル・アップダウンマネジメントが有効に機能するための支 えとなる組織構造、ハイパーテキスト型組織というものを紹介している。これは、ビュロ クラシーとタスクフォースを統合した、効率的かつ連続的な知識創造を可能にする組織で あるとしている。

・ビュロクラシーとタスクフォース
ビュロクラシーとは、官僚的な組織構造で、個々の職能をコントロールし結果が予測で きることを重視するものである。きわめて形式化、専門化、中央集権化されており、業 務プロセスを組織的に調整するための標準化に大きく依存しながら定型業務を効率よ く大規模に行うのに適している。前章でのトップダウンに通じる構造である。この構造 での官僚的なコントロールは、個人の自発性を殺ぎ、不確実で急激に変化する時代には 逆機能になるという弱点がある。
一方タスクフォースとは、ビュロクラシーの弱点に対処するために作られた組織構造で ある。企業におけるタスクフォースの多くは一時的な問題に対処するために、柔軟かつ 集中的に各部署から代表を集めた正式なチームやグループである。タスクフォースの弱 点として、タスクフォース・チームで創られた知識がプロジェクト完了後にばらばらに なり、ほかの組織成員へ容易に伝わらないことが挙げられている。多数の小規模なタス クフォースだけで構成された企業組織には、企業全体のゴールやビジョンを設定し達成 する能力がないとしている。
ここで、ビュロクラシーの典型的な組織として日本帝国軍を挙げ、ビュロクラシーであ りながらタスクフォースを取り入れた組織として合衆国海兵隊を挙げている。この二つ を、戦争の結果から比較し、ビュロクラシーとタスクフォースを統合した合衆国海兵隊 が日本軍に「組織的に」勝った、としている。

  ハイパーテキスト型組織においては、ビュロクラシーであるビジネス・システムと、 典型的なタスクフォースであるプロジェクト・チームの二つのレイヤー(層)の間で知識 がダイナミックに変換され、そこで創られた知識は次に第三のレイヤー、知識べースで組 織全体にとって意味のあるようなものに再分類・再構成される。

  著者らは、絶え間ない組織的知識創造を引き起こすにはハイパーテキスト型組織が理 想であると主張している。ハイパーテキスト型組織へ移行している例として花王を挙げ、 さらに、より完全に近い例としてシャープを挙げ、それぞれの構造や組織の概念を詳しく 説明し、著者らの提案する新しい組織構造が組織レベルでの知識創造には最適である、と いうことを示している。

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