第2巡:紹介:坪内 担当分

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発表:2003/05/22

基礎プロジェクト2「知識創造企業」 〜第7・8章〜

30795 坪内 俊一

<本全体における位置付け>
 まず、第7章「グローバルな組織的知識創造」は3章〜6章で取り上げられた日本の知 識創造企業がクローバル化していることをうけて、地球規模での組織的知識創造に焦点を あてている。
 第8章「実践的提言と理論的発見」は、本全体で分析してきたことを、実務的観点と理 論的観点の二つの視点から整理しなおしている。

<第7章「グローバルな組織的知識創造」>
 日本の企業のグローバル化は二つの問題を提起する。第一に、日本企業の用いる知識創 造プロセスは海外でも有効だろうか。第二に、日本企業が海外で外国企業と合弁会社を始 めるときそのプロセスにどのような調整が必要だろうか、というものである。
 この問いに対して二つの例を用いて説明を試みている。その例とは、日産最初のグロー バルカーであるプリメーラと、新キャタピラー三菱の油圧ショベルREGAシリーズである。
 この二つの例を見る前に、日本型組織と西洋型組織の組織的知識創造スタイルの違いを 確認しておかなくてはいけない。さまざまな違いの中、強調されている点を挙げると下の 表のようにまとめられる。

日本型組織
・グループ中心
・暗黙知志向
・共同化と内面化に強い
・頻繁なトップからのゆらぎ
・情報冗長性は高い

西洋型組織
・個人中心
・形式知志向
・表出化と連結化に強い
・トップからのゆらぎは少ない
・情報冗長性は低い

〜日産のプリメーラ・プロジェクト〜
 このケースでは日産がグローバルカー「プリメーラ」を開発しヨーロッパ市場に展開す るまでのプロジェクトについて考察する。そこで、プロジェクトの進行をグローバルな組 織的知識創造という視点で見ていく。
 まず、このケーススタディで注目すべき点として、2点挙げている。
 【1】グローバルな組織的知識創造に欠かせないものとしての「異文化間共同化」
 【2】製品開発への新しいアプローチ「アメリカンフットボールスタイル」
 この2点を中心に内容を整理する。

【1】「異文化間共同化」
 このケースでは二つの共同化が見られる。
 一つ目はプロジェクトの初期段階にヨーロッパ市場で成功する車の製品コンセプトと特 徴をはっきりさせるため、実際に体験できるよう三年間で、各部門からおよそ1500人 がヨーロッパに派遣され、現地の市場、クルマ文化、道路事情についての暗黙知を身につ けた。その後、ベルギーのブリュッセルにある日産の欧州技術事務所は日本からきた人に エンジン、コーナリング、ブレーキなどの性能などを実際に体験してもらった。このこと も共同化プロセスを促進した。
 二つ目は日本の生産ノウハウを英国の工場に移転するために、300人ほどの英国人エ ンジニアと技能工が日本に派遣されたことである。これは日本でのコスト目標を守りなが ら英国で生産するために日本での生産方式をそのまま移転することを目標とし、大部分が 作業員に共有されているため、日本には存在しない明文化されたマニュアルの作成ととも に英国人たちの暗黙知の習得を促進した。

【2】「アメリカンフットボールスタイル」
 日本と欧州では製品開発のアプローチのしかたが異なる。日本型は「ラグビースタイル」 欧州型は「リレースタイル」である。それぞれの特徴と長所・短所は下の表のようにまと めることができる。

欧州型
特徴 製品コンセプトを初期段階に明確に設定し、それに基づき設計目標も初期段階に具体的に決定し厳密な分業体制のもと開発を行う
長所 高性能・機能・高品質の徹底追及が可能
短所 リード・タイムが長い(7〜8年)。高い開発コスト

日本型
特徴 製品コンセプトは初期段階ではあいまいでニーズに合わせて変更していく。各職能部門がニーズの変化に合わせて密接に協力して開発を行う
長所 リード・タイムが短い(3〜4年)。高品質。市場ニーズの変化に即応
短所 妥協による低レベルの危険性。徹底した性能追及に向いていない

 ブリメーラ・プロジェクトでは上のどちらでもない、両方の長所をとりいれた新しい製 品開発アプローチが成果をあげた。この新しいスタイルを「アメリカンフットポールスタ イル」と呼んでいる。  このスタイルでは、開発開始時に少数のプロジェクトリーダーによって大きなコンセプ ト、中範囲コンセプト、製品コンセプトが決定される。その後それぞれの職能ごとの専門 家チームがいっせいに動き出し、協働しながら共通の目標に向かっていく、というふうに 製品の開発が進む。

〜新キャタピラー三菱のREGAプロジェクト〜
 このケースでは、日本の三菱重工業とアメリカのキャタピラーが新しく設立した新キャ タピラー三菱という会社がいくつもの障害を乗り越えて油圧ショベルのREGAシリーズ を開発し、世界市場での販売に成功したことを考察する。
 REGAシリーズを開発するにあたって、日本とアメリカの製品開発方式の違いが多く の衝突を生んだ。
 一番目の衝突は、コスト品質、性能、安全性の相対的な重要性であった。二番目の衝突 は、コンセプト創造のプロセスをだれがリードするかという問題に関して起こった。三番 目の衝突は、開発プロジェクトをどうすすめるかをめぐって起こった。四番目の衝突は、 設計デザインを世界的に標準化すべきかどうか、について起こった。論争を続けるうちに これらの衝突はお互いの価値観や問題へのアプローチのしかたの違いに起因している事が わかった。
 REGAの開発の成功は組織的知識創造への日本的なアプローチとアメリカ的アプロー チの見事な統合を示しているといえる。この統合は日本の強みとアメリカの強みの相乗作 用である。日本の強みは合同会議のような共同化の効果的使用とラグビースタイルの製品 開発などの自己組織チームに代表される。一方アメリカの強みは「Why?」の繰り返し、 より詳細な設計図面、標準作業マニュアルなどの形をとった表出化であり、コストモニタ リングシステムなどを生んだ連結化である。
 また、両サイドが四つの知識変換モードにより、知識創造におけるそれぞれの弱みを克 服、矯正しようとしたことも重要である。日本人エンジニアは暗黙知をいかに形式知に表 出化するかを学び、アメリカ人エンジニアは人々の相互作用あるいは現場での直接体験に よっていかに暗黙知を共同化するかを学んだ。
 最後に、このケースで示される三つの条件を提示する。
 第一にプロジェクトに参加している組織のトップはそのプロジェクトに強くコミットし ている事を示さなくてはいけない。
 第二に有能なミドルマネジャーを「グローバルナレッジエンジニアとしてプロジェクト に配属する事が重要である。
 第三にプロジェクト参加者は十分なレベルの相互信頼を築く必要がある。

<第8章「実践的提言と理論的発見」>
 この章では初めに、この本全体で論じてきた組織的知識創造に関する発見を整理し、そ の後、実践するうえでという視点と理論的な視点からその発見を論じている。

〜主要な発見のまとめ、
 組織的知識創造に関する主要な発見は次の七つにまとめられる。
 第一に暗黙知と知識知という2種類の知識の区別をし、その相互作用、知識変換が四つ のモードをもつことを理解すること。
 第二に暗黙知と形式知の相互作用は個人ベースで行われるが、他者との共有や組織内で の増幅により、高度な知識となる。このプロセスが重要である。
 第三に組織はグループおよび個人レベルの知識の創造・蓄積を促進する組織的環境や仕 組みを提供する。
 第四に組織的知識創造が非線形的な相互作用プロセスであることを示唆している。この プロセスは一つの組織内だけでなく、組織と組織の間にも起きる。
 第五にミドルアップダウンマネジメントモデルはトップダウン、ボトムアップモデルの 長所を統合し組織的知識創造にもっとも適しているといえる。
 第六にハイパーテキスト型組織が組織的知識創造に必要な条件であるだけでなく、それ がそのプロセスを促進する。
 第七に組織的知識創造の普遍的なモデルを開発するには日本的な方法と西洋的な方法の 長所を統合する必要がある。

〜実践上の合意〜
 以上の発見を実務者が組織内で実行する際のガイドラインという形で示す。
1.知識ビジョンを創れ
  トップは知識ビジョンを創り、それを組織全体に伝え、どのような知識を追求し創造 すべきか、そのおおよその方向を示す「分野」や「領域」を画定する。
2.ナレッジクルーを編成せよ
  知識の創造は1人の人間から始まる。豊かなひらめきと直感を育てるために組織内部 で多様な才能が利用できるようにしなければならない。
3.企業最前線に濃密な相互作用の場を作れ
  社内で強い主観と個性をもった個人を育てるためにはメンバーの間で頻繁かつ濃密な 相互作用が起きる環境を提供しなければならない。
4.新製品開発のプロセスに相乗りせよ
  新製品開発は新しい組織的知識を作り出すプロセスの中核であり、新製品開発プロセ スをうまく活用することが組織的知識創造の成功に必要である。
5.ミドルアップダウンマネジメントを採用せよ
  トップの描く夢と、第一線社員の見る現実のギャップを埋めるミドルマネジャーが二 つの暗黙知を統合するので組織的知識創造のプロセスのかぎとなる。
6.ハイパーテキスト型組織に転換せよ
  伝統的な組織構造にない柔軟性を手に入れるには、知識ベースという第三のレイヤー を持つハイパーテキスト型の組織に転換する必要がある。
7.外部世界との知識ネットワークを構築せよ
  外部の利害関係者の持つ暗黙知を動員して顧客の心象地図から知識をくみとるため、 より深いネットワークの構築が必要となる。

〜理論上の含意〜
 組織的知識は相互作用の結果として生まれるものであり、その背後には変換がある。変 換は対立する二つの事柄の総合によりなされる。そこでこの本に出てきた二項対立(ダイ コトミー)を順に追っていく。
1.暗黙的/明示的
  暗黙知と形式知は四つの変換モードによって相互に作用しあい新たな知識などを創造 する
2.身体/精神
  西洋では精神による学習が重視され、日本では武士道教育にあるように自分の体を使 った経験が重視される。この二つも中世の日本では統合されている。
3.個人/組織
  個人は知識の創始者であり、組織は知識の増幅器である。そしてその統合である自己 組織化チームが組織的知識創造の中心的役割を果たす。
4.トップダウン/ボトムダウン
  この両極を統合するのがミドルアップダウンモデルである。ミドルがトップとボトム をまきこみながら知識を創り出すのである。
5.ビュロクラシー/タスクフオース
  この両方の長所を結合したのがハイパーテキスト構造である。
6.リレー/ラグビー
  二つからそれぞれ得られる高性能とスピードはアメリカンフットポールスタイルによ って実現される。
7.東洋/西洋
 東洋と西洋では互いに互いの組織的知識創造における強みと弱みを理解しつつあり、 相互学習が始まっていると考える事ができる。

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