第2巡:総括:梅城 担当分

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発表:2003/06/05

基礎プロジェクト2 『知識創造企業』 総括

30777 梅城 崇師

1)内容の概要
 日本企業は西洋人にとって非常にわかりにくい存在である。効率的でもないし、企業家精神に富んでいるわけでもないし、自由奔放でもない。それなのに、国際市場のなかで着実に力をつけ、国際競争力を高めてきている。
 なぜ、日本企業は成功したのだろうか。本書では「組織的知識創造」の技能・技術によって日本企業は国際社会のなかで成功してきたと指摘している。では、「組織的知識創造」とは何か。それは、新しい知識を作り出し、それを組織全体に広め、製品やサービス、あるいは業務システムに具体化する組織全体の能力のことである。個人の知識と組織全体とは相互に作用しあうことが重要であり、そうすることによって新しいイノベーションの開発につながり、競争優位に立つことができる。それこそが短期間に日本企業が国際社会のなかで成功した要因なのである。
 日本と西洋の知識観も違う。西洋人の知識観は、知識は明白で形式的、体系的なものと考えられており、「形式知」として言葉や数字で表すことができ、伝達・共有が容易であるものとして捉えられている。しかし、日本人の知識観は知識は目に見えにくく、表現しにくい暗黙的なものであると考えられており、「暗黙知」として、非常に個人的なもので形式化しにくく、伝達・共有は困難であるとされている。
 この暗黙知こそが、組織的知識想像のなかで最も重要な要因なのであるが、経営資源のなかで暗黙知はこれまで無視されてきた。しかし、この形式知と暗黙知が相互作用することこそが企業の知識創造のキーポイントであり、組織的知識創造とは、この2つの知の相互作用によるスパイラル・プロセスである。
 組織的知識創造を最大限に促進するにはどのような経営プロセスにすればよいか。本書では、今までのトップダウンマネジメントでもなく、ボトムアップマネジメントでもない、第三のミドルアップダウンマネジメントという新しいマネジメントを提案している。さらに、これが有効に機能するための支えとなる組織構造、ハイパーテキスト型組織というものも紹介しいている。これは、ビューロクラシーとタスクフォースを統合した、効率的かつ連続的な知識創造を可能にする組織である。
 このほか、様々な具体例を挙げ、組織的知識創造について述べている。

2)議論の概要

○松下電器の株価について
 松下電器の株価は2000年までは順調な推移を続けており、知識創造企業として成長し続けていたと読み取れる。しかし、2001年初頭を境に株価が下降気味になっており、この原因について、アメリカの電子バブルや、同時テロ等が挙げられたが結局原因ははっきりしなかった。
 対して、ホンダ、キャノンは順調に推移しており、ハイパーテキスト型構造へ行こうしつつある花王も順調な株価推移であり、概して、組織的知識創造をおこなっているとされた企業は順調なようなである。

○マン・マキシマム、マシン・ミニマム
 「マン・マキシマム、マシン・ミニマム」というコンセプトは1人でちょっと考えればすぐにわかり、このようなことについて、わざわざグループ討論を行うなど、知識創造スパイラルは非効率であるという指摘があった。これは、「マン・マキシマム、マシン・ミニマム」というコンセプトが誰でも思いつくものであるという考えに立った意見であり、対して、当時の自動車産業ではそのようなコンセプトを作ることは難しく、グループ討論したからこそ、うまれてきた発想だという意見もでた。
 「マン・マキシマム、マシン・ミニマム」は、自動車は内部空間をなるべく広く、且つ車体はなるべく小さく軽く設計せよということであり、これはごく当たり前のことをいったに過ぎず、これを考えるために知識創造スパイラルが必要なのは非効率だという意見であるが、議論では、今でこそ、「マン・マキシマム、マシン・ミニマム」の精神はコマーシャルでも流れており、非常に広く浸透しているので、当たり前のように感じてはいるが、当時としては革新的なことだったのではないかという意見がでた。実際に当時の自動車業界について詳しい人がいなかったため、真偽のほどはわからないが、議論の大勢として、当時としては、「マン・マキシマム、マシン・ミニマム」のコンセプトは、グループ討論をしたからこそでてきた有用なものであるという流れであったと思う。

○情報通信の高度化
 知識創造では、形式知だけではなく暗黙知が共有される事が重要となる。形式知は文書化できる知識であり、その伝達はインターネットが普及した現在では容易である。しかし、暗黙知の共有は、濃密な人間交流がなければ不可能な部分が大半であり、インターネットによる共有が難しい。遠隔地での暗黙知の共有は可能であろうか。これに対して、次のような意見があった。インターネット等の電子関連の発達はすさまじく、テレビ電話などはすでに実用かされているし、まだ研究段階ではあるが、遠隔地の「触覚」などをインターネットやハードウェアを通して感じることもできるようになってきている。近い未来には、このような装置を通して、遠隔地の人と簡単にコミュニケーションがとれるようになり、インターネットを通した暗黙知の共有も可能になるのではないかと思われる。そうなれば、知識創造企業の、沈静化している日本経済のよりよい発展にもつながるのではないだろうか。

○組織的知識創造は成功の最大の要因か?
 最初のページに、「組織的知識創造の技能・技術こそが日本企業成功の最大要因なのだ」とかかれているが、組織的知識創造は「最大」の要因ではないとする意見が出た。実際に、組織的知識創造以外にも、企業と顧客や、官庁との協力関係がなければ、成功しないこともあり、「最大」ということばの解釈をめぐり種々の意見が出たが、結局、著書が前後の文脈上、強調したいがために筆の勢いで「最大」としたのではないかということとなった。

○暗黙知は伝達、共有は困難である
 形式知は伝達、共有は容易であり、暗黙知は伝達、共有は困難であるというのは必ずしも言えることではないという指摘があった。「富士山は綺麗である」という暗黙知は、一度見れば誰でも理解でき、数学や物理などの形式知に比べ、より早く伝達共有できるということである。
 この意見に対して、「富士山は綺麗である」ということが暗黙知であるかどうかという点が問題になった。どこまでが形式知でどこまでが暗黙知であるかという線引きが難しい。つまり、「富士山は綺麗である」ということが、暗黙知とも形式知ともとれるのである。
 富士山を見て綺麗だと思わない人がいたとする。このような人は十分いる可能性があるだろう。この人の「富士山は綺麗でない」という信念、嗜好、つまりは暗黙知を、「富士山は綺麗である」というように変えるということは、きわめて難しく、この点から暗黙知の共有、伝達は難しいといわざるを得ない。しかし、この人に対して、「富士山は綺麗である」という知識を表面的に与えること、つまり、形式知として与えることは難しいことではない。
 また、議論の中で、法律というものは、全員がそれをしてはいけないというように、知識を共有してはいるが、全員がその法律の全てを納得して共有しているのではないという意見が出た。これは、形式知は、全員が共有してはいるが、納得しているとは限らないことを示しているのではないかということにもなるのである。
 一般論として、暗黙知は伝達、共有は困難であるが、例外もありうるのではないだろうか。

3)自分の見解
 日本人は、暗黙知を知識とする風潮があり、やはり暗黙知は伝達しにくいものであると思う。
 コンピュータ産業の分野でもそれは顕著に現れており、欧米製のソフトウェア製品は、文書類がこれでもかというほどついてくるものが多いが、日本ではそれほどその傾向が目立つわけではない。
 特許制度の違いも絡んでくるが、アメリカではメモや仕様書をよく作るクセがある。ここで言うメモとは、メモ用紙に書いたような普通のメモではなく、記録としては残るが、決裁されたりはしないような文書などのことである。対して日本では、メモといえば、個人の手帳の中に書き留められるように、個人内部にある暗黙知であり、仕様書を作るのを面倒がる人が殆どである。
 日本人は「組織」の意識が強く、知識というものは組織で作り上げていくものであるという認識が強い。それは、個人個人が相互作用をし、その結果として生まれた知識は原型にとらわれずに、各個人に合わせて柔軟に適応できる。これは自然を基調とした日本の文化から生まれてきたものであると思う。逆に、西洋の形式知は、個人単位でがっちりとしたものであり、これは、人工を基調とした西洋の文化から生まれてきたものである。
 人から人へ、伝達しやすいのは、西洋的な形式知であるというのは認めるが、より人間の内部へと浸透し、より深いところまで伝達できるのは、日本的な暗黙知であると考える。
 形式知と暗黙知のどちらが優れているかといことは、日本と西洋のどちらがすぐれているかということと同様に、馬鹿げた比較である。どちらも優れているし、両者を活用すればいいのである。企業としての成功には、企業という組織内部の人間同士がしっかりと相互連携することが必要であるし、そのためには、形式知によるより安定した知識の共有に加え、「人間」を通した暗黙知による不安定な知識の共有も必要である。このことは、本書にある種々の例からも明らかである。
 私たちは、このような2種類の知識があることを理解し、両者をうまく利用していくことが必要であると思う。

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