第3巡:討論:浅田 担当分

トップページ >> 授業概要 >> 基礎プロジェクト2 >>
発表:2003/06/26

基礎プロジェクト・討論資料(イノベーションのジレンマ)

30774 淺田 義和

 「イノベーションのジレンマ」の最後に記述されていた、グループ討論の手引きを参考 に、そこで挙げられていた12個のテーマのうち、最後の問題について、他の問題と関連 づけながら考えてみたいと思う。

・イノベーションのジレンマにおける最大の論旨は、企業が主流市場でリーダーとなる ための経営慣行そのものが、破壊的技術によってもたらされる機会を失う原因になる、 といったものである。これは、言い換えれば、現在における「優良」経営が失敗をす る、ということになる。今後、「優良」経営、「不良」経営といった事は、どのように 定義できるのか。また、現在における「優良」経営と、破壊的技術のもとでの「優良」 経営の長所を結びつけるようなシステムは、どのようなものであろうか。

1.優良、不良の判断
 優良か不良かを判断するための一つの基準としては、その会社の売り上げ・業績を調べ る、といった手段がある。この場合、破壊的イノベーションが生じている場合、短期的な 業績を調査した結果は、一見して経営が悪化しているのと同様に見えてしまう。
 ここで必要になるものは、他の企業の経営をも見渡し、多極的に判断する能力であると 思う。本文中で述べられていたハードディスクの例で見ても、企業が開発時に想定したも のとは異なる用途において、需要が存在している。つまり、自分たちが最初に想定してい た市場以外に、その製品を必要とするような市場を見つけるような能力が必要とされる。
 もちろん、100%見つけるような能力を身につける事は困難であろうし、そこまで要 求したいという意味ではない。(100%発見できる能力が容易に身に付いてしまったので あれば、考えている技術は破壊的ではなく、むしろ持続的なものとなってしまうであろう。) ここで考えたい能力は、既存の産業と、新しく生まれた技術を結びつけ、今までに無いよ うなものを「想像」する能力を持っている、という意味である。周囲から見れば、まるで 現実味を帯びていないようなアイデアであったとしても、それを元にして新しい製品が誕 生するかもしれない。
 短期的に見て、企業の業績が下がった原因が、破壊的イノベーションによるものである か、それと本当に何か問題が生じたのか、を判断しようというのであれば、このように想 像力を振り絞って考え、何かアイデアが存在するのなら、それが実現することにかける、 というのが、危険ではあるが一つの手段ではないか。(このリスクを少しでも低減する方法 は、あとで考えてみる。)

 そして、このような判断によって「優良」「不良」を判断する場合、一つの大きな鍵とし ては、その企業がどれだけの他企業とつながりを持っているか、という点が挙げられると 思う。企業間で関係が出来ていれば、それだけ新技術の伝達も早くなり、新しい製品開発 が行われやすくなる、と考えることができるからである。
 また、その企業内に、市場を見渡し、新製品を生み出せるようなつながりを想像できる 人材がいることも、評価すべき点になるだろう。仮に破壊的イノベーションが生じ、他の 分野からの需要によって発展しようとした場合でも、破壊的技術を生み出した企業がそれ を取りやめてしまっては、発展することは不可能である。従来の市場だけに目を奪われる のではなく(もちろん、従来の市場も大切にする必要はあるが)、新しい市場にも目を向け る余裕を持っている、ということも大切ではないか。

 少し矛盾したような言い回しにもなってしまったが、極論してしまうと、破壊的イノベ ーションを受け入れるために最も大切なことは、「一時的な減退が、何か問題があったため にそうなったのか、それとも破壊的イノベーションによってもたらされたものなのかを判 断する能力」であり、さらに突き詰めれば、「将来を予測しうる能力・時代の先を越す能力」 とも言い換えられるのではないか。破壊的イノベーションの特徴として、その成果がしば らく時間をおいてから現れる、ということがある。これは、破壊的とされる技術が、その 時代のニーズには合っていなかった、ということである。ここで、企業が取るべき方策と して、「それをどのようにしてニーズに合わせるか」ということも考えられるが、それ以前 に、「なぜニーズに合わなかったのか」を考えることが重要である。
 過去の製品や、他企業の情報などを元にして考えた際、それがニーズとは全く逆のベク トルであった場合(例えば、「小型化」したノートPCを希望している市場に対し、「高速で はあるが大型」といったものを制作した場合など)は、企業の失策であったという可能性 が高くなる。そうではなく、ニーズとは異なる向きのベクトルであった場合(例えば、「小 型化」ノートPCを希望している市場に対し、「高速であるが重い」といったようなものを 制作した場合)は、破壊的技術としての一面を備えている可能性がある。
 どちらの場合も、初めは市場ニーズに沿った方向へ動く。問題は、そのニーズが飽和し て、新たなニーズが生じた場合である。今の例えで言う「小型化」が進んだ後、次に来る ニーズを予測することは困難であるが、一つだけ言えることがある。上記二つの技術を比 べた際、どちらを希望するかといえば、ほぼ間違いなく後者であろう。前者は、それまで のニーズと逆行してしまう「大型化」という側面を持っているのに対し、後者は、「重くな る」という欠点はあるものの、それまでのニーズと逆行するまでには至っていない。どち らの技術にも欠点は存在しているが、後者の技術は、後の事を考えるのであれば、発展さ せていく価値があるといえる。

2.新しいシステム
 以上の考えをふまえて、従来と今後の「優良」経営を結びつけたシステムを考えてみる と、一つ、容易に思いつくものがある。
 これは、中小企業ではなく、大企業で限定されてしまうが、上記のようにして破壊的(と 見られる)技術が発見された場合、そちらにすぐ乗り換えるのでも、廃棄してしまうので もなく、従来の製品開発と平行して研究・開発を進める、ということである。本書の例で 言えば、ハードディスク市場におけるカンタムは、当時ではニーズに沿ってはいない技術 (この時点では、破壊的技術かどうかを判断しがたい技術)を撤廃せずに、新たな会社を 設立し、研究開発を行う、という体制をとっていた。これが功を奏して、市場のニーズの 変化に対しても、柔軟な対応が取れたのである。
 この例で言えば、新しい技術がたまたま破壊的技術であったために上手くいったのであ り、場合によっては新技術が無用の長物になることもあり得る。しかし、この場合でも、 従来の産業と平行して行っているのであれば、利益はほとんど上がらないとしても、大損 失をする危険性もなくなる。時代の先を越してしまったような、(その時点のニーズからし てみれば)破壊的である技術を発見した場合、経営を圧迫しない程度に、その技術への関 心を深めていくことが、破壊的技術とうまく付き合っていく手段の一つとして、考えられ ると思う。

 最も、個人的には、ここに述べた事はごく基本的なことであると思う。従来の技術には ない、新しい技術を取り入れていくことは、社会の発展のためには有用であるだろう。ま た、その新技術が少しでも時代を先取りしたものであるなら、市場に受け入れられるまで に時間がかかっでしまうことは目に見えており、それゆえ、利益が上がるようになるまで に、一時的な落ち込みとも思えるような時期が発生してしまうのは当然であろう。ここで 重要になることは二つある。一つは、最初に述べたような、将来を見越して考える能力の 必要性。そしてもう一つは、その企業がとる、経営体制である。
 こういった新市場にも目を向けた方針を取っていく場合、もっとも大きな壁として考え 得るものが、日本における風潮的なものである。日本では、こういった新しい、しかし成 功の確率が不明であるような技術を見つけた場合、「それまでの経営でも成功しているのだ から、危険を冒してまで新技術に手を付ける必要性はない」と考える場合が多いのではな いだろうか。そしてこれは、特に大企業で多く見られる傾向だと思う。高年齢者になるに 従って、終身雇用・年功序列に根づいた考えが多くなることは否定できないであろう。そ して、こういった考えが、従来までの技術だけで進んでいこう、といった風潮を作り出し ているように思える。そして、このような考えで経営を進めていってしまうと、他企業に よって破壊的技術が発見され、それが市場で広まった後では、すでに出遅れてしまい、文 字通り「破壊」されてしまうことにもなりかねない。
 これを打破するには、ベンチャーのように、若い人物がトップに立つ経営か、もしくは (前回の知識想像企業で述べられていた)ミドルアップダウン方式のように、会社の中間 層を主軸とし、すこしでも前向きな方針をとれるような経営に持ち込む必要があるのでは ないか。

3.最後に(まとめと今後の課題)
 二つの特性を結びつけた、新しいシステムとして、上記をまとめてみると、
1.新技術を発見した場合に、それが今後どのように役立っていくかを想像できるような、未来を見渡す能力を持つ人材を揃えている。
2.新技術に対しては、従来のものを持続的に発展させたものでなく、逆行してもいない場合、従来のものと平行して、研究開発を行う。
3.そのような制度に対し、理解力のあるような人物が会社の主軸となる必要がある。基本的には、終身雇用・年功序列といった概念には囚われないようにすべき。
といった事が挙げられる。
 最後に、こういった三つの特徴を実現し、破壊的技術を取り入れた中でも「優良」経営 を行っていくにあたって、どのようなことが必要となりうるか、考えてみようと思う。

 最初のものは、現在の学校における教育方針を変化させなければ、実現は困難であろう。 よく言われていることだが、小、中学時代のころから、教科書的な知識を押し込まれるだ けではなく、自分で考えていく力をつける訓練が必要なのではないか。結局、知識を増や していくだけでは、持続的なイノベーションはできるであろうが、破壊的なイノベーショ ンを行ったりすることは困難であろうし、ましてやその社会に対する影響を考えることな どは
 2番目に関しては、最後の会社形式における課題が達成されれば、自ずと実現されると 思われる。時には思い切った決断をする勇気のある人物が経営を引っ張っていくことがで きれば、これはごく当たり前のこととして実現できるはずだからである。
 3番目の問題であるが、これは、原因は明確であり、古くから根付いている考えである が、解決がかなり困難であると思われる。日本国内においては、良くないと分かっていて も結局、今のような経営状態に似通ったものになりうる。自力でベンチャー企業を立ち上 げるのではなく、既存の会社でこういったことを実現しようとするには、どちらかといえ ば日本国内ではなく、海外での方が現実味を帯びていると思われる。

administrated by umekkii -> admin@umekkii.jp