第3巡:紹介:山中 担当分

トップページ >> 授業概要 >> 基礎プロジェクト2 >>
発表:2003/06/19

基礎プロジェクト1B 「イノベーションのジレンマ」紹介 第六章、第七章、第八章

23014 山中桂一郎

<第六章 組織の規模を市場の規模に合わせる>
 成長企業は、期待する成長率を維持するだけでも、毎年収入を大幅に増やす必要がある ため、小規模な市場が、このような収入を増やす有効な手段となる可能性は次第に低くな る。この問題に対処する方法として、破壊的技術の商品化を目的とするプロジェクトを、 小規模な市場にも十分関心を持てるほど小規模な組織に組み込むことである。

 持続的技術でリーダーシップをとることが、ディスクドライブ業界の先駆者に優位をも たらした事実はほとんど無いが、破壊的技術のリーダーシップが極めて重要という事実が ある。実際、小規模な新しい市場に参入することによって成長を求める企業は、大規模な 市場で成長を求める企業の20倍の売上げを計上したという事例がある。また、破壊的技術 によって開拓された市場に遅れて参入した企業より、破壊的技術をリードした企業の方が はるかに高い売上げを記録したという事実もある。これがイノベーションのジレンマであ る。
 破壊的イノベーションでリーダーシップをとれば大きな見返りがある。しかし、実績の ある企業がそれに出遅れるというケースが多い。

 優秀な経営者は、様々な理由から組織の成長を維持しようとする。しかし、企業が大き くなってくると成長率を維持することは難しくなる。仮に、年商4000万ドルの企業が20% の成長率を保つ必要がある場合、1年目には800万ドル、2年目には960万ドルの増益が必 要である。年商40億ドルの企業が20%の成長率を維持するには、1年目で8億ドル、2年 目で9億6000万ドルの拡大が必要になる。
 破壊的技術は新しい市場の誕生を促すが、数億ドル規模の新市場などない。しかし、新 しい市場が小規模なうちに、大企業にとってはほとんど魅力の無いうちに参入することが 重要である。
 成功している大企業の経営者がこのような局面に出会った際、どのように対処したらよ いか?それには以下の3つのアプローチが考えられる。

1 新しい市場の成長率を押し上げる
 アップルコンピューターはアップルIIの発売から10年後、50億ドル企業に成長した。そ の後、PDA市場の出現に伴い「ニュートン」という製品の開発に何100万ドルと投資した。 ニュートンの機能は、徹底した市場調査によって決定された。しかしそれは失敗した。14 万台売り上げたのだが、それはアップルの売上高全体の約1%にしかならなかったのである。 アップルはPDA市場の開拓を急ぐためにニュートンに大規模な投資を行ったため,魅力的 な収益を得ることは難しくなったのである。

2 市場がうまみのある規模に拡大するまで待つ
 多くの大企業が破壊的技術に対して選ぶ第二の方法は「新しい市場がうまみのある規模 になる」まで待つというものである。この方法は魅力的なようであるが、新しい市場を開 拓する企業は、後から参入する企業には真似のできない市場の需要に良くあった能力を身 につける事が多いため、裏目に出ることがある。
 1984年、シーゲートテクノロジーは業界二番手で3.5インチドライブを開発した。しか し「まだ十分な規模の市場がない」と考え、出荷を見送っていた。1987年、3.5インチ市 場が16億ドルに達し「十分にうまみのある規模」になると、シーゲートはついに販売を開 始した。しかし、デスクトップ市場には販売されたものの、ポータブルコンピューターメ ーカーには売れなかった。その理由は、ポータブルコンピューターメーカー向けの3.5イン チドライブ販売を開拓し、リードを守っていたコナー・ペリフェラルズがポータブル市場 への対応方法を根本的に変えたからである。コナーは、ポータブルコンピューター市場向 けドライブを主要顧客向けに注文設計するというパターンを作ったのである。さらに、マ ーケティング、開発、製造の各プロセスも修正していた。

3 小規模な組織に小さなチャンスを与える
 大企業は、初期の破壊的技術によって生じるチャンスが動機付けになるほど小規模な組 織に、プロジェクトを任せる方法を選ぶとよい。それには、独立した組織をスピンアウト させるか、適度な規模の企業を買収するという方法がある。
 実際に、このようなアプローチによる成功例もある。
 CDCは5.25インチドライブを商品化する部門をオクラホマシティに設置した。機会に見 合った規模の組織を設置したいという明確な意思を持っていた。実際、その事業は大成功 を収めた。
 アレンブラッドリーは、破壊的技術に取り組む小規模な企業を買収することによってモ ーター制御装置の機械式から電子式という破壊的移行に成功した。
 ジョンソン&ジョンソンは、アレンブラッドリーと同様の戦略を用いて内視鏡手術装置 や使い捨てコンタクトレンズなどの破壊的技術に対応し、大成功を収めた。
 このようなアプローチはま新しいものではない。イノベーションにおいては規模を小さ く抑え、独立性を保つことが優位に繋がると主張する経営学者も多いのである。

<第七章 新しい成長市場を見いだす>
 破壊的技術の用途となる市場は、開発の時点では単に分からないのではなく、知りえな い。したがって、破壊的イノベーションに直面したときにマネージャーが打ち出す計画は 実行するための計画というより、学習し、発見するための計画であるべきだと、筆者は述 ベている。
 この章では、ディスクドライブ業界の専門家が、持続的技術の市場を驚くべき正確さで 予測していながら、破壊的イノベーションの新しい市場の出現を予見し、その規模を予測 できなかった理由が書かれている。

持続的技術と破壊的技術の市場予測

 ディスクドライブ業界に関しては、早い時期から異例な量の市場情報があった。主な情 報源として、カリフォルニア州マウンテンビューのディスク/トレンド社が毎年発行してい る「ディスク/トレンド・レポート」がある。これは、世界中の企業が1975年から現在ま でに発売したあらゆるモデルのディスクドライブが掲載されている。そこにはドライブの 性能仕様、使用されている部品技術などが詳しく書かれている。
 「ディスク/トレンド」の各号では、前年の各市場分野の販売台数と売上高を公表し、そ の後4年間の分野別予測を提供している。全般的に、確立された市場に関しては「ディス ク/トレンド」の予測はよく一致するが、破壊的なディスクドライブ技術によって生み出さ れる、新規の市場に関する予測については苦しんでいる(p200参照)。
 「ディスク/トレンド」では、持続的技術に関する予測も、破壊的技術に関する予測も同 様の方法で作成している。
 したがって、持続的技術にうまく適用できた方法でも,まだ存在すらしていない市場に 適用すると失敗は必至だといえる。

HPの1.3インチ・キティホーク・ドライブの見きわめ

 1991年、HP(ヒューレット・パッカード)のディスク記憶装置部門の社員のグループが 容量20MBの1.3インチ小型ドライブを考案し、キティホークと名づけた。これはHPに とっては画期的なプログラムであった。HPはPDA市場の出現により、キティホークの市 場は今後大きくなると判断した。
 キティホークの技術開発は予定通り進んだ。PDA市場で受け入れられるために慎重に調 査してきた機能を盛り込んだ。しかし、PDA市場は思うように実現しなかった。そのため、 キティホークは発売から2年間で予測の数分の1の売上げしか達成できなかった。
 その後、家庭用テレビゲームメーカーから大量の注文があった。しかしメーカー側が望 んでいたのは、それほど性能の良いものではなかった。HPは、明確になった市場の用途に あわせて機能を落としたドライブを作る忍耐力も資金も無かった。そして1994年後半、 HPはキティホーク市場から引き上げた。
 HPのプロジェクトマネージャーは、計画の運営における最大の間違いは市場に関する自 分たちの予測を正しいものとして行動したことだと述べている。
 どのような顧客がどの程度の量を必要とするのかは誰にも分からない、という想定の元 でプロジェクトを進めていれば、製品の設計、生産設備の投資に関しても、実地の様子を 見ながら柔軟に対処することができたはずである。

ホンダの北米オートバイ業界への進出

 戦後、ホンダは低い労働コストを生かして北米にオートバイを輸出したいと考えていた。 当時のホンダの調査によれば、アメリカ人はバイクを長距離ドライブ用に使っていること が分かった。そこでホンダの技術者は米国市場専用に高速で馬力のあるオートバイを設計 し、マーケティングを開始するために3人の社員をロサンゼルスに派遣した。
 事業は難航した。ホンダの製品はコスト以外の点で潜在顧客にとって秀でたところが無 かったのである。
 しかし、ひょんなことから社員が持ってきていた、日本では配達用として人気だった「ス ーパーカブ」というバイクが現地の人の目に止まった。それは現地ではオフロード・バイ クとして使われた。
 そして、北米にはレクリエーション用のオフロードバイクという未開拓の市場があるか もしれないということになり、大型バイク戦略ではなく、小型バイク戦略を採用すること にした。
 その後、ホンダは世界一流の設計技術と生産手法を駆使し、何度も価格を引き下げつつ 製品の品質を高め、生産量を拡大することができた。
 ホンダは北米のオートバイ市場がどのような市場かを正確に予測できなかっただけでな く、潜在市場の規模も予測できなかった。しかしホンダは、全く予測していなかった市場 で成功した。

 破壊的技術の市場を正しく予測するのは難しいとき、マネージャーはさらに熱心に調査 し、綿密に計画を立てようとする。だがこのアプローチは破壊的技術に対しては良くない。 「専門家の予測は必ずはずれる」からである。そのため、そのような市場に最初に参入す る時の戦略は間違っていることが多い。
 成功した事業の大多数は、最初の計画を実行し始め、市場で何がうまくいくか、何がう まくいかないかが分かってきたときに、当初の計画を放棄しているという調査結果がある。
 破壊的技術の場合には、慎重な計画を立てる前にまず行動を起こす必要がある。どこに 市場があるかわからないという心構えで破壊的事業にアプローチすることが重要なのであ る。

<第八章 組織にできること、できないことを評価する方法>
 この章では、過去に破壊的技術への対応に成功した企業は、すべて機会の大きさに見合 った規模の独立組織を新設している点について、その背景となる理論が述べられている。

 組織にできることとできないことは、資源、プロセス、価値基準の3つの要因によって 決まる。

資源

 「資源」は組織にできること、できないことを決定する要因の中で最もわかりやすいも のである。具体的には、人材、設備、技術、商品デザイン、ブランド力、情報、資金、さ らに供給業者、流通業者、顧客との関係などがある。これはプロセスや価値基準よりも、 はるかに容易に組織間で譲渡できるものが多く、言うまでもなく、質の高い資源が豊富に 手に入れば、組織が変化に対応できる可能性が高くなる。
 しかし、資源をただ分析するだけでは、組織の能力について十分な理解はできない。価 値の高い製品やサービスを作り出す能力は、資源ではなくプロセスや価値基準の中にある。

プロセス

 従業員が資源のインプットを価値の高い商品やサービスに変換するとき、組織は価値を 生み出す。このときの相互作用、協調、コミュニケーション、意思決定のパターンを「プ ロセス」と呼ぶ。
 プロセスは特定の業務に対応するために定義され、事実上の進化を遂げる。このため、 ある業務のために作られたプロセスを使ってそれを実行した場合は効率よく達成できるが、 同じプロセスを全く別の業務に適用すると遅くて効率が悪くなることがある。つまり、あ る仕事を遂行する能力を定義するプロセスが、他の仕事については無能力を明らかにする。
 プロセスはその性質上、一貫性を保つため基本的には変化しない。変更が必要なときは 厳しく管理された手順に従って変更する。つまり、組織が価値を生み出すメカニズムその ものが、本質的に変化を拒む。

価値基準

 組織の価値基準とは、仕事における優先順位を決定し、注文が魅力的かどうか、新商品 のアイデアが良さそうかどうかなどを判断する際の基準である。優先順位の決定は、企業 のあらゆるレベルの従業員によって行われる。
 企業が大きく複雑になるほど、従業員を教育し、企業の戦略や事業モデルに合った優先 順位を決定できるように育てることが必要である。優良企業を示す指標の1つは、一貫性 のある明確な価値基準が組織全体に浸透しているかどうかである。
 しかし、明確で一貫性がある価値基準は、企業に何ができないかを定義するものでもあ る。

変化に対応する能力を生み出す

 人気の高い経営改革プログラムやエンジニアリングプログラムによって教えられる内容 とは異なり、プロセスや価値基準には資源ほどの柔軟性はなく、訓練することもできない。
 一般的には、的を絞った組織の方が的の定まらない組織よりはるかに成功する確率が高 い。理由はプロセスと価値基準を、対象とする仕事に注意深く合わせているからである。
 そのため、経営者は組織の能力が新しい仕事に適していないと判断した場合、新しい能 力を生み出すために次の選択肢に向き合う必要がある。

1 買収による能力の獲得

 経営者は能力を自ら開発するより買収する方が競争の上でもコストの面でも意味がある と考えることがある。
 買収した企業のプロセスや価値基準が本当に成功の源であるとすれば、買収する側の経 営者は、その企業を新しい親会社に統合しようとするべきではない。買収された会社のプ ロセスや価値基準の多くが失われる危険があるからである。したがって,この場合、親会社 は子会社のプロセスと価値基準へ資源を投入する戦略をとったほうがよい。その方が新し い能力の獲得といえる。
 しかし、買収の理由が資源である場合は、子会社を親会社に統合することは意味がある。 獲得した資源を親会社のプロセスに取り込むことにより、親会社の既存の能力を生かすこ とができるからである。

2 新しい能力を内部で生み出す

 確立した組織のなかで新しい能力を開発しようとした企業の実績は、まちまちである。 資源を補強して、既存の組織の能力を変える事は比較的簡単である。しかし、このような 資源を変化の無いプロセスにあてはめてみても、ほとんど変化はおきない。
 実際に、トヨタは資源ではなく、プロセスにイノベーションを起こすことによって世界 の自動車業界に衝撃を与えた。しかし、それに対抗したGMは資源に投資をしたものの、 GMの業績はほとんど変化しなかった。組織のもっとも基本的な能力は、プロセスと価値基 準にあるからである。
 しかし、プロセスを変えることは難しい。理由は、現在のプロセスが機能しやすいよう に組織に境界が設定されている場合が多く、さらに経営者が既存のプロセスを捨てられな いからである。
 プロセスは目的ごとに異なるため、1つのプロセスで根本的に異なる2つの作業を行うこ とはできない。そのため、2つの目的に対して同時に取り組む必要があるならば、2つの全 く異なるプロセスが必要になる。そこで、経営者は別のチームを新設し、そのなかで新し い問題に取り組む別のプロセスを決定したり、調整できるようにする必要がある。

3 スピンアウト(分離)組織によって能力を生み出す

 破壊的技術の脅威から、別のコスト構造を構築して収益性や競争力を身につける必要が ある場合や、新しい機会の規模が主流組織の成長需要に対して小さすぎる場合に、解決策 の1つとしてスピンアウト組織が必要となる。
 ただし分離するにしても、新しいプロジェクトが主流組織のプロジェクトと資源を争わ ないようにすることが必要である。物理的に分離するというより、資源配分プロセスから 独立することが重要となる。

 変化に直面した組織を率いる経営者はまず、成功するために必要な資源を確保しなけれ ばならない。次に、組織に成功するためのプロセスや価値基準があるかどうかを検討する。 経営者は組織の能力が無能力の決定的要因になるということを念頭において、これらの問 題について分析する必要がある。
 安定した企業にとってイノベーションが難しい場合があるのは、能力の高い人材を、新 しい仕事の成功に役立たないプロセスや価値基準の中で働かせようとするからである。能 力のある人材を能力のある組織に配置することは、経営者にとって重要な責任である。

administrated by umekkii -> admin@umekkii.jp