第3巡:総括:川崎 担当分

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発表:2003/07/03

シミュレーション基礎プロジェクト2
「イノベーションのジレンマ」総括

システム創成学科シミュレーションコース
30786 川崎真弘

1、本文の要約
 本書は、ある業界をリードしてきた優良企業が、破壊的イノベーションに直面したとき、その地位を守ることに失敗するという現象の解明とその解決策で構成されている。
 第一章では、ハードディスク業界を例にとって、破壊的イノベーションが業界内でどのように優良企業を追い落としていったのかを見る。第二章では同じくハードディスク業界でのイノベーションの歴史を、「バリューネットワーク」という概念を使って、解析する。第一章〜二章での優良企業の失敗の理論は、以下の3つの発見に基づいている。第一に、「持続的」技術と「破壊的」技術の間の戦略的に重要な違いである。第二に、技術の進歩のペースが、市場の需要の変化のペースを上回ることが多いということである。第三に、実績ある企業の顧客構造と財務構造が新技術への移行を困難にしているということである。続く第三章では、ディスクドライブ業界と同じことが、掘削機業界でも起きていることを記す。第四章では、優良企業が、そのバリューネットワークの構造的特徴により、破壊的技術によって開かれた下位市場に移行するのが困難であるという理論を、鉄鋼業界を例に展開している。
 第五章〜九章では、破壊的イノベーションに直面したときの経営者の取るべき策を提示している。それは、次の五つの方法である。
 【1】、破壊的技術はそれを求める顧客を持つ組織に任せる。
 【2】、組織の規模を市場の規模に合わせる。
 【3】、新しい成長市場を見出す。
 【4】、破壊的技術に取り組む際、主流組織の資源の一部は利用するが、プロセスや価値基準は利用しない。破壊的技術に適した価値基準やコスト構造を採用する。
 【5】、顧客の需要の軌跡と、自社の技術者の供給の軌跡の両方を理解する。
 第十章では、この五つの対応策をどのように活用していくか、を破壊的技術の要素を持っている「電気自動車」を事例として、研究している。
 最後の第十一章では、本書の研究内容のまとめが述べられている。それは次のようなことである。
 ・市場が求める進歩のペースが、技術のよって供給される進歩のペースとは異なる場合がある。
 ・イノベーションのマネジメントには、資源配分プロセスが反映される。
 ・あらゆるイノベーションの問題には、市場と技術の組み合わせの問題が伴う。
 ・多くの組織の能力は、経営者が考えるよりはるかに専門化されており、特定の状況にのみ対応できるものである。
 ・破壊的技術に直面したとき、目標を定めて大規模な投資を行うために必要な情報は存在しないことが多い。
 ・破壊的技術と持続的技術のどちらを取り組むかによって、明確に異なる姿勢をとる必要がある。
 ・実績ある企業が新規参入、または下位市場に移動しようとするときに、慣習的な経営知識が強力な障壁となる。

つまり、破壊的技術に直面したとき経営者はまず、これらの問題を理解し、各組織の市場での地位、経済構造、開発能力、価値が、顧客の力と調和し、持続的イノベーションと破壊的イノベーションというまったく違う仕事を邪魔せず、支援する環境を作り出す必要がある、ということである。

2、討論
 討論のまとめでは、各紹介者の論点とそれに対する自分の考えをまとめる形をとることとする。

●浅田君の討論資料
 「優良」経営と「不良」経営の違いと、従来と今後の「優良」経営を結びつけたシステムは、どのようなことか、について。
 まず、「優良」企業と「不良」企業の違いについてだが、「将来を予測する能力・時代の先を見越す能力」が必要であると述べている。次に、新しいシステムについての章では、終身雇用・年功序列制が破壊的技術に乗り遅れる要因だと述べ、若い経営者や中間層を主軸とした「ミドルアップダウン」方式が、それらの失敗を打破できる、と述べている。

・自分の意見
まず、この資料には「優良」企業がどうあるべきか、また経営者はどうすればよいかについて、よくわからないまま終わっていた。資料の最後のほうに、「思い切った決断をする勇気のある人が経営を引っ張っていく」ことが必要と書いてあるが、それができれば誰も苦労しないというか、本文にもあったように多くの経営者は、先を見通す能力を持っており、破壊的技術を見落としているわけでもないわけで、企業経営においては、投資者や顧客の圧力により、思い切った決断ができないのである。そこで有効となってくるのが、独立組織を作るなどの対策である。さらに、資料中ほどにある、「ミドルアップダウン」方式と矛盾しないか。個人的見解として、今後の「優良」経営として求められることは、過去にとらわれない力、現在の位置を冷静に判断する力、未来を予想する力である。

●梅城君の討論資料
 【1】破壊的技術を見分けることは本当に可能か?
 【2】独立組織は破壊的技術に対して本当に有効なのか?
 【3】規模の効果を使ったマイクロソフトはなぜ成功したのか?
 【4】先進国にとって後進国は破壊的イノベーションか?

・自分の意見
【1】の疑問について、確かに性能の軌跡と需要の軌跡の分析だけで「破壊的技術」と決め付けてしまうのは、多少短絡的であるように思える。本文にかかれてあるような「破壊的」特徴を備えていても、その後上位市場を侵略できずに、消えていった技術はいくらでもあるだろう。しかし、新たな技術が発見されたとき、それが破壊的かどうかの確証が持てないからといって無視を決め込むのは、視野の狭い指導者のすることである。本文にも言及されているように、破壊的技術は最初、往々にして失敗するものである。それを包括することのできるような小さな組織、わずかな資金で挑戦することのできる独立組織をつくり、破壊的技術に挑んでいくような姿勢が経営者には必要なのではないだろうか。
【4】の考えは、個人的に大変面白い論点を持っていると思う。本書はいわゆる、「企業」の経営指南書であるが、その理論を「国家」単位で考えているところがすばらしい。確かに、本書に書かれている破壊的イノベーションの特徴を、後発国は多く備えていると思うし、実際、最近の中国などの躍進は破壊的技術を備えた新進企業のようである。では、われわれ日本などの先進国はどうすればよいのか。下位市場に移動しようとしても、顧客(この場合国民)の需要にこたえるには高い性能を保たねばならず、さらに高い人件費など、コスト構造の改善は困難を極めることが予想されるため、破壊的後発国の勢いに追い落とされるのを待つだけのような感じもある。さらに、われわれ日本は戦後、すさまじいスピードで発展してきたつけである、「膿」が今頃になって後から後から出てきている。企業の不祥事、銀行の破綻・・・など例を出せばきりがないほどである。これらの膿は、急速に発展していく社会についていこうと、地盤・構造をしっかり固める前に構造物を次々と作っていった結果である。まさに「内憂外患」という言葉がもっともふさわしい状況だと思われる。このようなときは外患に対処する前に、早々に内憂を処理するべきである。今、かつての大手企業も次々と再編が行われ、構造の改革が行われている。このように、まず、前世代の膿をのこらず吐き出し、新たなシステム・構造の構築に、力を注がねばならない。内部問題を解決、つまり構造改革の達成が成し遂げられると次は、外患対策である。ここまでやや悲観的過ぎたが、ここで新たな「破壊的」かもしれない技術が日本には存在する。それは「環境保全」技術である。その例として電気自動車が本文に挙げられているが、この「環境保全」技術はあらゆる市場に食い込めるポテンシャルを持っている。幸い、後発国の成長によって市場に空席ができた。この空席に次に入り込めるのが、「環境保全」技術だと思う。後発国の技術が、先進国のそれに追いついたとき、国民が次に求めるのは、「環境に優しい」技術であると、私は確信している。「環境保全」という一種の機能は、急速に発展しているときにはあまり国民に受け入れられなかったが(かつての日本、現在の後発国)、成長が横ばいになった今、「環境にやさしい」=「人に優しい」ということがようやく浸透しつつある。近い将来、中国などの後発国が先進国に追いついたときには、「環境保全」技術という破壊的イノベーションによって、上位市場(このときは中国など現在の後発国が占めている)を再び侵食していくことが可能であると思う。まだまだ日本は立ち直る術を秘めている。(と信じている。)

●岡田君の討論資料
 【1】現代では、大企業の上位市場への移動性というものは弱くなって、同時に新規参入企業にとっての破壊的技術の魅力も弱くなっている。  【2】この本の内容はすべて後付で、終始結果論と理想論で終わっている。
・自分の意見
【1】についてだが、確かに低価格製品を売りにして成功する企業も珍しくなく、大企業にとっても魅力的な分野となっているとは思うが、やはり、大企業にとって下位市場への移行はいまだ難しいものであることは変わらないと思う。たとえば、いまや大量生産・低価格を前面に押し出して成功を収めているユニクロであるが、同じような商品を大手デパートの西武百貨店に入っているような、アパレルメーカーが売り出したら成功するであろうか。そのような商品は顧客の要求と大きく異なり、失敗するのが目に見えている。ユニクロと西武では顧客も市場もまったく違うのである。反対にユニクロは、今のままの低価格で、西武と同じようなファッション性の高い製品を売り出せば、成功し上位市場を侵食する可能性は大いにあると思う。このように、現代でも大企業はその顧客により下位市場にはなかなか簡単には移動できないのである。

●樫木君の討論資料
 【1】持続的イノベーションと破壊的イノベーションの区別は困難ではないのか。
・これに関しては梅城君の章で自分の意見を述べたので省略する。

以上

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