第3巡:総括:篠原 担当分

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発表:2003/07/03

基礎プロジェクト2「イノベーションのジレンマ」
総括レポート

30792 篠原大典

(1)内容の概要
序章
  序章では、優良企業が「破壊的技術」というものによって失敗するということについて簡単に概要が述べられている。


第一部  優良企業が失敗する理由

第一章 なぜ優良企業が失敗するのか
  ここでは、優良企業の失敗する理由が、ハードディスク業界の例を挙げて説明されている。この業界では確立された性能向上の奇跡を持続すること(持続的イノベーション)が最先端技術であり、大手優良企業が新しい破壊的技術に乗り遅れたのは、顧客に束縛され、下位市場へのアプローチに失敗したことが原因であるとされている。

第二章 バリュー・ネットワークとイノベーションへの刺激
  新規参入企業と実績ある企業の成功と失敗を分ける原因として、「バリュー・ネットワーク」という概念を提案している。

第三章 掘削機業界における破壊的イノベーション
  ハードディスク業界での例に続き、掘削機業界での破壊的技術について述べられている。ガソリンエンジンの登場に際して、この技術変動での移行をリードしていた実績ある企業でも、油圧式の駆動システムの登場により、その多くが失敗に追い込まれたことについて分析されている。

第四章 登れるが、降りられない
  ディスクドライブ業界、掘削機業界での歴史に見られるように、バリュー・ネットワークに属する企業は、利益率の高い上位のネットワークには移動可能だが、破壊的技術によって実現した利益率の低い下位市場へは移動できない。しかし、新規参入企業にとっては、上位への移動性があるため、下位市場は魅力的なのである。


第二部  破壊的イノベーションへの対応

第五章 破壊的技術はそれを求める顧客を持つ組織に任せる
  経営者が破壊的技術の市場で成功を収めるには、独立した組織を、その技術を必要とする顧客の中で活動させる方法がよいということを述べている。

第六章 企業の規模を市場の規模に合わせる
  大規模な企業が成長率を維持するためには大きな収入が必要であり、小規模な市場に収入を求めることは難しい。しかしその結果、破壊的技術に乗り遅れることがある。そうならないためにはどうすればよいか、という問題の解決法として、3つのアプローチが示されている。1、新しい市場の成長率を上げる 2,市場がうまみのある規模に拡大するまで待つ 3,小規模な組織に小さなチャンスを与える という3つである。

第七章 新しい成長市場を見いだす
  破壊的技術の用途となる市場を開発の段階で知ることは不可能である。よって、破壊的イノベーションに直面したマネージャーが打ち出す計画は、実行するための計画というより、学習し発見するための計画であるべきだと述べられている。その例として、ディスクドライブ業界での新しい市場の出現とその規模の予測の失敗、ホンダの北米オートバイ業界への進出を挙げている。

第八章 組織のできること、できないことを評価する方法
  組織にできることとできないことは、資源、プロセス、価値基準の3つの要因によって決定される。経営者は、組織の能力が新しい仕事に適していない場合、1,買収による能力の獲得 2、新しい能力を内部で生み出す 3,スピンアウト(分離)組織によって能力を生み出す という選択と向き合わなければならない。

第九章 供給される性能、市場の需要、製品のライフサイクル
  製品の性能のサイクルを 機能→信頼性→利便性→価格 の4段階とする「購買階層」モデルについてと、破壊的技術がそのサイクルに与える影響について述べられている。

第十章 破壊的イノベーションのマネジメント
  技術が破壊的かどうかを知るためにはどうすればよいのか、また、破壊的であった場合、市場がどこにあるか、販売戦略はどうすればいいのか、ということについて、電気自動車を例に挙げて述べられている。

第十一章 イノベーションのジレンマ
  最後に洞察のまとめとして7つの項目が挙げられている。
第一:市場が求める、あるいは吸収できる進歩のペースは技術によって供給される進歩のペースと異なる場合がある。
第二:イノベーションのジレンマには資源配分プロセスが反映される。
第三:あらゆるイノベーションの問題には、資源配分の問題と同様、市場と資源の組み合わせの問題が伴う。
第四:たいていの組織の能力は、経営者が考えるよりもはるかに専門化されており、特定の状況にのみ対応できるものである。
第五:破壊的技術に直面したとき、目標を定めて大規模な投資を行うために必要な情報は存在しないことが多い。
第六:常に先駆者になる、常に追随者になる、といった一面的技術戦略をとるのは賢明ではない。
第七:新規参入や市場の移動に対しては、経済学者が定義し、重視してきたような障壁と全く別の、強力な障壁がある。

(2)討論
○優良・不良の判断、破壊的イノベーションかどうかの判断はどうすればよいのか
  ・まだ判断がつかない場合は、破壊的技術であった場合に市場に乗り遅れないようにわずかでも研究をしておくべきではないのか。
  ・大企業でそういう方針をとっても失敗するため、独立した組織を作るなどの方法をとるべきだと述べているのが本書ではないのか。
  ・破壊的技術というものはあとから振り返れば分かるもので、その当時(投資するかどうかを迫られているとき)では区別がつかなく、企業が積極的に破壊的イノベーションに挑戦することはできないのではないだろうか。
  ・初期の携帯電話のように、資金力が必要で上位市場ともとれるものもあり、破壊的イノベーションとするかどうかを決めるのが難しい場合もある。
  ・携帯電話の成功の例としてNTTdocomoがあり、これは本書で述べられているような独立組織による破壊的イノベーションと言えるのではないのか。

○大企業は利益の成長率を維持するために、利益率の大きい上位市場に向かいやすく、利益率の低い下位市場に移行しにくい
  ・筆者は上記のように述べているが、現代において爆発的に成長している企業の数は少なく、利益率が低い下位市場とはいえ収益の見込める市場を見逃すことはないのではないか。

○破壊的技術が出現したとき経営者はどう対処するべきか
  ・筆者の紹介している、独立した組織のスピンアウト、適度な企業の買収という方法しかないのであろうか。
  ・スピンアウト、スピンオフという2つの言葉に関するニュアンスの違い。

○破壊的イノベーションの失敗は技術的なものではなく、マーケティングの上で失敗したことによる
  ・著者が電気自動車の例で述べているようなマネジメントは本当に可能なのか。本来は先に性能・対象の消費者というコンセプトを決めるべきで、筆者が述べているように破壊的かどうかを判断してから市場を模索するというのは理想論・結果論ではないのか。

○破壊的技術の性能が向上するまで待つべきではないのか
  ・技術の成長というのは不透明なものであり、破壊的かどうかというのも、どの段階で判断すればいいのか難しい。筆者は技術の成長を待っていると失敗すると述べているが、このような先の分からない技術というものに対して早期参入するということに関し、開発段階での議論が不十分ではないのか。

○独立組織は破壊的技術に対して本当に成功しやすいのか
  ・企業は独立組織を作るよりも統合した方が、経費削減や事務作業の共通化など「規模の効果」によってより効率がよくなるのではないか。HPの例では、分割直後こそ目的を達成できたがその後徐々に下落してしまっている。この後HPは合併も行っているが、そのときにも業績は落ちており、どちらの方法にしても必ずよい方向に転ぶわけではないのではないか。

○先進国に対して、後発国は破壊的イノベーションであるか
  ・先進国はより高度な技術分野への進歩を目指し、後発国は安い人件費を生かして単純作業部分の仕事へと参入してきた。この場合の後発国は本書で述べられているような破壊的イノベーションととることができるのではないか。

(3)自分の見解
  本書で述べられている内容は、基本的に納得できる説明がなされており、自分にとってかなり説得力のあるものであった。ただ、第十章の電気自動車の例で、初めから破壊的技術と決めてどう経営するか、というシミュレーションがあったが、やはり一番重要なのは討論でも多く出てきたような破壊的技術かどうかの見極めであろう。破壊的技術となりうる確証のようなものが得られれば、著者が述べているような方法も可能であろうと思うが、そういった事が不可能であったために多くの優良企業が失敗してきたのであろうと思う。本書では破壊的技術と分かっていながら、大企業ゆえの利益率重視のせいで参入できずに失敗したとあるが、破壊的技術と確信し参入して失敗した例はもっと多くあると思う。破壊的技術が破壊的であったと確定されるのは歴史の中での話であり、当時の人間にとっては技術が進歩し変化し続けている限りその技術は先の分からないものであったのではないかと思う。

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